本記事は、中島 健寿氏の著書『年上との話し方で人生は変わる』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

A professional businessman placing a reassuring hand on a colleague's shoulder
(画像=Liana / stock.adobe.com)

心を動かすのは、完璧な人よりもひたむきな人

年上の人が、誰かに「力を貸したい」と思う瞬間には、共通する空気がある。

それは、言葉ではなく、姿勢や振る舞いからにじみ出るものだ。

たとえば、目の前のことに一生懸命取り組んでいる人。

すぐに結果が出なくても、思うようにいかない中でも着実に歩みを進める人。

あるいは、自分の意見を持ちながらも、素直に学ぶ姿勢を崩さない人。

こうした人に出会うと、多くの年上は自然とこう思う。

「この人の力になれたら、きっともっと面白くなる」

「自分の経験が、この人の役に立つなら惜しくない」と。

支援したくなるかどうかは、実績では決まらない。完璧な人よりも、未完成だけど、ひたむきな人のほうが、年上の心を動かすことが多い。

思い出してほしい。どんなアニメや漫画の主人公も、最初から完璧な存在ではない。むしろ、失敗したり、悩んだり、迷ったりしながら少しずつ成長していく姿に、私たちは心を動かされる。

完璧なキャラクターは脇役になっても、主人公にはなれない。

伸びしろこそが、人を惹きつけるのだ。

さらに言えば、年上の多くは「自分の経験を次の世代に渡したい」という本能的な想いを持っている。

その想いに火をつけるのが、「本気で何かに向き合う若手」の存在だ。

もちろん、応援されるために良い子を演じる必要はない。

ただ、「この人に何かしてあげたい」と思わせるような、誠実さや必死さ、そしてちょっとの愛嬌があるかどうか。それだけで、信頼の入り口は大きく変わってくる。

年上が支援をしたくなるのは、「この人となら、関わっていて気持ちがいい」と思えたとき。つまり、成長を見守りたくなる人であるかどうかが本質なのだ。

共感の本質は「相手がどう受け取るか」

年上との関係において、信頼を深める最大の鍵は、相手の立場をどれだけ想像できるかにある。

共感とは、感情的な優しさではなく、技術であり、姿勢でもある。

その出発点にあるのが、相手の視点に立つという行為だ。

たとえば、自分の意見を通す前に、相手がどんな立場にいて、どんな責任や重圧を抱えているのか、その背後にある背景や立場を想像できるかどうかで、発する言葉の意味や届き方は大きく変わってくる。

こちらの何気ない一言が、相手にとっては思わぬ衝撃になることもある。

一方で、相手の状況をくんだうえで伝えたひとことは、心に深く届く。

つまり、どう言うかだけでなく、「相手がどう受け取るか」を想像すること。これが共感の本質だ。

さらに言えば、年上が求めているのは自分を理解しようとする若手の姿勢だ。完璧な言葉や態度ではなく、「この人は、自分のことをちゃんと見てくれているな」という安心感に、心が開いていく。

共感力とは、経験や知識がなくても育てられる力だ。

相手の背中に、どんな重みがあるのか。

どんな景色の中で戦ってきたのか。

それを想像しようとするその姿勢こそが、信頼の入口になる。

年上との関係性が深まる「敬意」の示し方

年上との関係性を深めるうえで欠かせないのが、敬意の示し方だ。

ただしそれは、堅苦しい言葉づかいや、無理にへりくだることではない。

むしろ、自然な所作や態度の中にこそ、年上は敬意を感じ取る。

たとえば、「話を最後まできちんと聴く」「目を見てうなずく」「相手の話を遮らずに受け止める」といった基本動作。

どんなに言葉遣いが丁寧でも、スマホを触りながらの相槌や、話の腰を折るような口出しでは、敬意は伝わらない。

また、学ぶ姿勢を見せることも、最高の敬意のひとつだ。

なにか教えてもらったとき、すぐに「ありがとうございます」と返し、素直にノートを取り出してメモを取る。この行動だけで、「この人は吸収する気がある」「真剣に受け取ってくれている」と感じてもらえる。

最近ではスマートフォンでメモを取る人も多いが、年上と対面しているときは、あえて紙のノートを出したほうが印象が良い。

スマホを操作している姿は、たとえメモを取っていても「話を聞いていないのでは?」と誤解されてしまいやすい。

だからこそ、聞いている姿勢が目に見える形で伝わることが大切なのだ。

「すごいですね」と言葉にするよりも、「この人の話を、自分の成長にちゃんと生かしたい」という姿勢を、行動で示すこと。

敬意とは、言葉より先に、態度と反応で伝わるものなのだ。

“年上との話し方で人生は変わる
中島 健寿(なかじま・けんじゅ)
1996年、栃木県生まれ。立正大学法学部卒。 大学卒業後、独立。
わずか3年で世界10カ国以上で展開し、1万人以上の組織を作る。
ビジネスの傍ら、現在は、これまでの経験をもとに「信頼され、引き上げてもらえる人になるためのコミュニケーション術」を軸にセミナーや講演を全国で展開。
また、10歳で野球を始め、中学時代には専用グラウンドもなくわずか5人しかいないチームを2年で日本一に導く活躍を見せる。15歳で日本代表として国際大会に出場し、アジア大会準優勝。白鷗大学足利高校時代には同校初の選抜甲子園出場を果たす。
大学時代には明治神宮野球大会で人生2度目の日本一を経験。それぞれの世代で常に学生野球の頂点を極めてきた。 プライベートでは5歳、3歳、0歳の三児の父。

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