本記事は、中島 健寿氏の著書『年上との話し方で人生は変わる』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

心を動かすのは、完璧な人よりもひたむきな人
年上の人が、誰かに「力を貸したい」と思う瞬間には、共通する空気がある。
それは、言葉ではなく、姿勢や振る舞いからにじみ出るものだ。
たとえば、目の前のことに一生懸命取り組んでいる人。
すぐに結果が出なくても、思うようにいかない中でも着実に歩みを進める人。
あるいは、自分の意見を持ちながらも、素直に学ぶ姿勢を崩さない人。
こうした人に出会うと、多くの年上は自然とこう思う。
「この人の力になれたら、きっともっと面白くなる」
「自分の経験が、この人の役に立つなら惜しくない」と。
支援したくなるかどうかは、実績では決まらない。完璧な人よりも、未完成だけど、ひたむきな人のほうが、年上の心を動かすことが多い。
思い出してほしい。どんなアニメや漫画の主人公も、最初から完璧な存在ではない。むしろ、失敗したり、悩んだり、迷ったりしながら少しずつ成長していく姿に、私たちは心を動かされる。
完璧なキャラクターは脇役になっても、主人公にはなれない。
伸びしろこそが、人を惹きつけるのだ。
さらに言えば、年上の多くは「自分の経験を次の世代に渡したい」という本能的な想いを持っている。
その想いに火をつけるのが、「本気で何かに向き合う若手」の存在だ。
もちろん、応援されるために良い子を演じる必要はない。
ただ、「この人に何かしてあげたい」と思わせるような、誠実さや必死さ、そしてちょっとの愛嬌があるかどうか。それだけで、信頼の入り口は大きく変わってくる。
年上が支援をしたくなるのは、「この人となら、関わっていて気持ちがいい」と思えたとき。つまり、成長を見守りたくなる人であるかどうかが本質なのだ。
共感の本質は「相手がどう受け取るか」
年上との関係において、信頼を深める最大の鍵は、相手の立場をどれだけ想像できるかにある。
共感とは、感情的な優しさではなく、技術であり、姿勢でもある。
その出発点にあるのが、相手の視点に立つという行為だ。
たとえば、自分の意見を通す前に、相手がどんな立場にいて、どんな責任や重圧を抱えているのか、その背後にある背景や立場を想像できるかどうかで、発する言葉の意味や届き方は大きく変わってくる。
こちらの何気ない一言が、相手にとっては思わぬ衝撃になることもある。
一方で、相手の状況をくんだうえで伝えたひとことは、心に深く届く。
つまり、どう言うかだけでなく、「相手がどう受け取るか」を想像すること。これが共感の本質だ。
さらに言えば、年上が求めているのは自分を理解しようとする若手の姿勢だ。完璧な言葉や態度ではなく、「この人は、自分のことをちゃんと見てくれているな」という安心感に、心が開いていく。
共感力とは、経験や知識がなくても育てられる力だ。
相手の背中に、どんな重みがあるのか。
どんな景色の中で戦ってきたのか。
それを想像しようとするその姿勢こそが、信頼の入口になる。
年上との関係性が深まる「敬意」の示し方
年上との関係性を深めるうえで欠かせないのが、敬意の示し方だ。
ただしそれは、堅苦しい言葉づかいや、無理にへりくだることではない。
むしろ、自然な所作や態度の中にこそ、年上は敬意を感じ取る。
たとえば、「話を最後まできちんと聴く」「目を見てうなずく」「相手の話を遮らずに受け止める」といった基本動作。
どんなに言葉遣いが丁寧でも、スマホを触りながらの相槌や、話の腰を折るような口出しでは、敬意は伝わらない。
また、学ぶ姿勢を見せることも、最高の敬意のひとつだ。
なにか教えてもらったとき、すぐに「ありがとうございます」と返し、素直にノートを取り出してメモを取る。この行動だけで、「この人は吸収する気がある」「真剣に受け取ってくれている」と感じてもらえる。
最近ではスマートフォンでメモを取る人も多いが、年上と対面しているときは、あえて紙のノートを出したほうが印象が良い。
スマホを操作している姿は、たとえメモを取っていても「話を聞いていないのでは?」と誤解されてしまいやすい。
だからこそ、聞いている姿勢が目に見える形で伝わることが大切なのだ。
「すごいですね」と言葉にするよりも、「この人の話を、自分の成長にちゃんと生かしたい」という姿勢を、行動で示すこと。
敬意とは、言葉より先に、態度と反応で伝わるものなのだ。

わずか3年で世界10カ国以上で展開し、1万人以上の組織を作る。
ビジネスの傍ら、現在は、これまでの経験をもとに「信頼され、引き上げてもらえる人になるためのコミュニケーション術」を軸にセミナーや講演を全国で展開。
また、10歳で野球を始め、中学時代には専用グラウンドもなくわずか5人しかいないチームを2年で日本一に導く活躍を見せる。15歳で日本代表として国際大会に出場し、アジア大会準優勝。白鷗大学足利高校時代には同校初の選抜甲子園出場を果たす。
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