本記事は、杉田 健吾氏の著書『「ひとり社長」の賢い節税 元国税が教えるお金の残し方』(明日香出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

意外と知らない節税の本来の目的
突然ですが、あなたは節税が好きですか?
この質問に対して、多くの方が「そりゃ好きでしょ」と答えるのではないでしょうか。確かに、うまく節税できると嬉しいものです。
しかし、なぜ節税できると嬉しいのでしょうか。単に税金を納めなくて済むからでしょうか。
ここで重要なのは、節税の本来の目的を理解することです。この理解が不足していると、あなたの節税が間違った方向に進み、手元にお金が残らず、事業の拡大が遅れてしまう恐れがあるのです。
誤解されがちな節税の目的
多くの人は「節税の目的は税金を減らすこと」だと考えています。
確かに、少しでも税金の支払いを減らしてお金を節約することは節税の一面です。
しかし、これは節税の本質ではありません。
時々、税金を減らすことばかりに目が行って、節税の本来の目的を見失ってしまう人がいます。その代表例が「税金を払うくらいなら経費でバンバンお金を使ってしまおう」という考え方です。これは大きな間違いです。
例えば、あなたのビジネスで100万円の利益が出たとします。これをそのまま申告すると、約30万円が税金として徴収され、手元に残るのは70万円程度になります。ここで「30万円も税金で持っていかれるなら、経費で使ってしまおう」と考えてしまう人がいます。必要以上にパソコンを購入したり、まだ使える車を買い替えたり、過剰な接待をしたり、といった行動をしやすくなるのです。
確かに、このようにして利益を経費で相殺すれば、30万円の税金は払わなくて済みます。
しかし、同時にあなたの手元から100万円が出ていってしまうのです。これは決して賢い節税とは言えません。
正しい節税の考え方
節税の本来の目的は、手元に資金を残すことです。
100万円の利益があった時、30万円の税金を払っても、70万円は手元に残ります。
この70万円を次の事業拡大のために使うことができるのです。
一方、税金を払わないために不要な経費を作ってしまうと、確かに税金は払わなくて済みますが、手元にお金が残りません。これでは事業を拡大することはできません。
ここをくれぐれも勘違いしないでください。
節税という甘い言葉に騙されないために
ビジネスが少し軌道に乗ると、次のように様々な節税の話が耳に入ってくるようになります。
- 特定の金融商品購入による節税
- 保険加入による節税
- 高級車購入による節税
- 賃貸アパート建設による節税
- 海外不動産投資による節税
- タックスヘイブンの活用
これらの節税方法には、一見魅力的に見えるものもあります。しかし、「節税」という甘い言葉に騙されないよう注意も必要です。
節税の本来の目的は、それを実行した結果、トータルで手元のお金が増えることです。
節税を検討する際は、冷静になって考えることが大切です。
その節税方法は本当に手元にお金を残すものなのか、よく吟味してください。そして、自分で理解できないものには手を出さないのが賢明です。これが節税の基本原則です。
賢い節税のための5つのポイント
正しい節税を実践するために、次の5つのポイントを押さえておきましょう。
- 手元に資金を残す…… 節税の最終目的は、事業に使える資金を確保することです。
- 不要な支出を避ける…… 税金対策のための無駄な支出は避けましょう。
- 事業の成長につなげる…… 節税は事業の成長を支援するものでなければなりません。
- 法令を遵守する…… 脱税と節税はまったく別物です。つねに法令を遵守しましょう。
- 長期的な視点を持つ…… 一時的な節税効果だけでなく、長期的な事業の成長を考えましょう。
これらのポイントを意識しながら節税戦略を立てることで、あなたのビジネスはより健全に、そして力強く成長していくことができるでしょう。

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