この記事は2025年9月26日にSBI証券で公開された「自民党総裁選が間近!「防衛」「防災」主力関連銘柄」を一部編集し、転載したものです。

目次
自民党総裁選が間近!「防衛」「防災」主力関連銘柄
9月相場も終盤を迎え、東京株式市場では、次なる大きな材料として自民党総裁選(10/4投開票の予定)に注目が集まっています。
今回の自民党総裁選に関しては、党所属国会議員や党員の中にも、投票未定層も多いとされています。有力視される候補者はいるものの、確実視される候補はまだいないとみられます。
ただ、候補者5名が掲げる公約については、「防衛」や「防災」分野の強化を、多くの候補者が盛り込んでいます。どちらも党内のコンセンサスの共通公約領域といえる分野です。そのため、誰が総裁になったとしても、これらの2分野への投資は継続が見込まれます。
【防衛(防衛力強化、経済安全保障など)】
2022年末、政府は防衛費の引き上げ方針を決定。2024年度予算では、過去最大の防衛費が計上されました。国策テーマ株に加え、地政学リスクが高まったことも相まり、2024年から重工大手を中心に株価は上昇が続いてます。防衛力強化を重視する次期候補者が複数いるため、総裁選開催決定後、株式市場で再評価された格好です。
【防災(国土強靭化・インフラ整備更新・減災など)】
石破政権では、2026年度までの防災庁設置が既定路線として進行中。実際に、法制化・予算化まで進んだ場合、関連分野への需要が一段と顕在化しやすくなります。日本各地でインフラ老朽化等による事故や、想定雨量を超える豪雨災害等が多発しており、喫緊の課題として意識されています。
▸ご参考
【建設後50年以上経過する社会資本の割合、2040年3月の将来予想数値】
道路橋(橋長2m以上):約75%、トンネル:約52%、水道管路:約41%、下水道管渠:約34%
(国土交通省インフラメンテナンス情報より、2025/9/26確認)
今回の「日本株投資戦略」では、「防衛」や「防災」の関連銘柄の中から、安定的な業績推移が見込まれる企業を抽出するため、下記のスクリーニングを実施しました。
条件は以下の通りです。
・東証プライム市場に上場
・時価総額が1,000億円以上
・各種資料・報道等から、「防衛」や「防災」に関連性があるとみられること
・今期会社計画の予想売上高と経常利益が増収増益見通し
・今期会社計画の予想経常利益と純利益がどちらも黒字
・取引所または日証金、当社による信用規制・注意喚起銘柄を除く
掲載銘柄は上記条件をすべて満たしています。掲載順は銘柄コード順です。

掲載銘柄を解説!
ミライト・ワン(1417)
通信インフラを核とする総合インフラエンジニアリング企業です。かつてはNTT向けの通信設備工事の比重が高かったですが、現在は非通信事業(社会・企業インフラ/データセンタ・エネルギー)の売上高構成比が60%と過半を占めています(25.3期)。非通信事業では、コンテナ型データセンタや、再エネ・電源設備などに対応しています。
通信を核に隣接領域を一体で面倒を見るのが特徴。たとえば「道路(通信)を造って守る会社」が、信号・照明(電源・空調)、監視カメラ(センサー)、交通管制(クラウド/運用)までまとめて担うイメージです。施設・街・企業ネットワークを“止めない”仕組みを提供し、設計?施工?保守まで一括対応できる体制を築いています。
事前防災・減災に加え、発災時は基地局やデータセンタの早期復旧・保守で地域の通信を支えます。「防災DXワンストップサービス(防災対策をDXで統合)」をはじめ、退避櫓(たいひやぐら)や、上・下水道の老朽化対策・維持など、多岐にわたるサービスを通じ、防災対策・インフラ強化に貢献する企業です。
「防災庁設置準備アドバイザー会議」の報告書(2025年)で示された防災施策の司令塔機能強化の方向性に基づき、補助の充実や、標準仕様の明確化がなされた場合、サービスの裾野が広いため、自治体やライフラインから向け受注の拡大が期待されます。
関電工(1942)、九電工(1959)
関電工(1942)と九電工(1959)は、建物の裏方インフラを担う総合設備工事会社です。ビル・工場・公共施設などの「電気・空調・通信・給排水」といった設備を設計から施工・保守まで一括して手がけています。さらに、防災設備・防災通信・非常電源の設計・施工にも対応し、防災インフラの整備や災害発生時のインフラ復旧を担う存在でもあります。
関電工(1942)は、広域復旧の動員力や、国や自治体からの案件で豊富な実績を有し、大型案件の官公需への対応力があります。九電工(1959)は「事前防災」における幅広い実装力が強みです。自治体向け防災行政無線では、水位や雨量等の防災用データ収集も行っています。
両総合設備工事会社にとって、防災庁の設置=即時受注ではありません。しかし、「防災庁設置準備アドバイザー会議」の報告書(2025年)では、防災施策の司令塔機能強化が方向性として示されています。前述のミライト・ワン(1417)同様、補助の充実や、標準仕様の明確化がなされた場合、両社ともに裾野が広く受注機会が増えやすくなると想定されます。
※九電工(1959)は、10/1に商号変更予定(新商号:クラフティア)
三菱重工業(7011)
三菱グループの重工メーカーであり、防衛関連銘柄の代表格です。
売上構成比(25.3期)が最も大きいセグメントは「エナジー」(売上構成比36.1%)で、火力発電、再生可能エネルギー、原子力といった幅広エネルギーインフラの提供を行っています。
「航空・防衛・宇宙事業」の売上収益が占める割合は、全体の20.5%(25.3期)です。防衛分野では、戦闘機や潜水艦、飛しょう体などを製造しています。全社売上収益の14%が防衛省向け(25.3期)で、防衛費増額による恩恵をダイレクトに受けやすい銘柄といえます。
今期(26.3期)の会社予想は、売上収益が5兆4,000億円(前期比7%増)、税引前利益が4,000億円(同6%増)となっています。 「航空・防衛・宇宙事業」の売上収益が前期比30%増となりそうです。今期1Q(26.4-6月期)では売上収益1兆1,936億円(前年同期比7%増)、税引前利益949億円(同7%減)でした。金融収益の減少で経常減益でしたが、会社側が重視する事業利益は同24%増でした。
川崎重工業(7012)
三菱重(7011)と同様、防衛関連銘柄の代表的な銘柄です。
防衛省向けに航空機や潜水艦の開発・製造を行っています。防衛省からの受注が、全体の18%(25.3期)を占めています。航空機を扱う航空宇宙システム事業では、民間向けの需要が変動する一方、防衛省向けが概ね安定した需要として存在しているとしています。
25.3期は売上収益2兆1,293億円(前期比15%増)、事業利益1,431億円(同209%増)でした。「航空宇宙システム」や「エネルギーソリューション&マリン」(潜水艦含む)が伸びました。今期1Q(25.4-6月期)の業績は、売上収益4,884億円(前年同期比10%増)、事業利益205億円(同21%増)でした。今期(26.3期)の会社計画の予想事業利益は前期比1.3%増の見込みです。
新明和工業(7224)
トラックメーカーが製造した車体に取り付ける機能部品を製造する「特装車」が売上高(25.3期)の41%を占める主力部門です。防衛関連分野は、「航空機」(同期売上高構成比13%)で、国内唯一の飛行艇メーカーとして、「US-2型救難飛行艇」の製造を担っています。
今期(26.3期)は売上高2,850億円(前期比7%増)、営業利益150億円(同7%増)が会社計画です。ただ、今期1Q(25.4-6月期)は前年同期比23%減益でした。
▽当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証プライム市場を中心に好業績が期待される銘柄・株主優待特集など、気になる話題についてわかりやすくお伝えします。