本記事は、堀田 秀吾氏の著書『時間をムダにしない人の習慣』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

時間をムダにしない人の習慣
(画像=MQ-Illustrations/stock.adobe.com)

「今さらやめられない」を手放す

ムダな時間を生み出す思考のクセ

一生懸命取り組んできたことがなかなか実を結ばないとき、あなたはどうしますか? 「方向性が間違っているかもしれない」「自分に合っていないのかもしれない」と、一度立ち止まって考えますか? それとも「ここまでやったのに、いまさら引き返せない」「自分は間違っていないはずだ」と、そのまま突き進みますか?

実は、後者の道を選んだ瞬間、時間は静かに失われていきます。
人は誰でも「自分の選択は正しい」と信じたい生き物です。
ビジネスでも勉強でも恋愛でも投資でも、「やめたほうがいい」とわかっていても、そこに注いできた努力や時間、お金、感情を否定するのがつらくて、「もう少しだけ」とさらにリソースを費やしてしまう……。
こうした「思考のクセ」の背景には、次のような心理が働いています。

① 確証バイアス:都合のいい情報だけを集める
私たちは、膨大な量の情報の中から、自分の意見や価値観にとって都合のいいものばかりを集め、都合の悪いものをシャットアウトする傾向があります。
これを「確証バイアス」といいます。
たとえば、「A株は絶対に上がる」と思い込んでいる人は、A社に関するポジティブなニュースばかりを集め、不安材料や警告記事を無視しがちです。
その結果、冷静に判断することができなくなってしまうのです。

② 認知的不協和:「間違い」を認められない
認知的不協和とは、自分の思考と行動が矛盾したときに生じる不快感のことです。
人は、その不快感を解消するため、どちらかを無理に変えようとします。
ただ、行動を変えるにはエネルギーが要るため、多くの場合、思考のほうを後づけで調整してしまうのです。
たとえば、「今の仕事は嫌だ」と思っているのに、退職する勇気を持てないと、「今の仕事を嫌いではない」と思い込もうとするのです。

確証バイアスも認知的不協和も、自分を守ろうとする心の働きですが、確証バイアスが現実を歪め、認知的不協和がそれを維持し、気づかないうちに「時間の浪費」と「判断の停滞」を引き起こします。
「深酒は体に悪い」とわかっていても深酒をやめられない人は、「酒は百薬の長だから」「酒を飲まないと眠れなくて、健康に良くないから」と都合のいい情報ばかりを信じ、「深酒は体に悪い」という思考自体を変えてしまいます。
仕事でも、「この方針は正しい」と信じたあとで、現場でうまくいかない状況に直面すると、「タイミングが悪かった」「相手の理解が足りない」と考え、方針そのものを見直すチャンスを逃してしまったりするのです。
なお、スタンフォード大学のフェスティンガーらは、被験者を2つのグループに分け単調な作業をさせた後、次に実験に参加する人(実はサクラ)に対して、「この作業はとても面白くて楽しかった」と嘘をつくことを依頼しました。そして、片方には報酬として20ドルを、もう片方に1ドルを与え、作業に対する感想を聞きました。
すると、1ドルしかもらえなかったグループのほうが「作業が楽しかった」と感じていました。
彼らは報酬の少なさを正当化するために、思考のほうを変えたのです。
ちなみに、20ドルのグループのほうは「お金のためにつまらない作業をやった」と考えていたそうです。

「ここまでやったのに」が時間や労力やお金を奪う

確証バイアスと認知的不協和により間違った行動に時間やお金を割き続けていると、サンク・コスト(埋没費用)がどんどん増大します。
本来なら見切りをつけ、被害を低く抑えるべき局面で、「ここまで頑張ったのに、いまさらゼロにはできない」と考え、さらにリソースを注ぎ込み、結果的に膨大な時間と労力、ときにはお金を失ってしまうのです。
ミネソタ大学のスウェイスたちが動物で行った実験でも、「ここまで時間を使ったんだから」という気持ちがあると、非生産的な活動をダラダラ続けてしまうことがわかっています。
では、どうすればこの悪循環から抜け出せるのか。
思考の偏りから脱却し、無駄な時間を減らすには、「メタ認知」を持つことが合理的です。メタ認知とは、自分の思考や行動を一歩引いて観察する力です。
すぐにできる方法としては、「自分の意見とは逆のニュース、レビュー、意見を読む」「反対の意見には、どんな根拠があるのか、と考える」「もし友人が同じことをしていたら、と考える」の3つが挙げられます。
自分の思った通りに物事が進んでいないときは、ぜひこれらを実践してみてください。
情報の解像度が上がり、冷静さを取り戻し、確証バイアスや認知的不協和にとらわれるのを避けられるはずです。

「ここまでやったのに」にとらわれず、一歩引いて自分の思考を観察する。
現実を客観視すれば、確証バイアスなどを防ぎ、時間を守ることができる。

時間をムダにしない人の習慣
堀田 秀吾(ほった・しゅうご)
言語学者(法言語学、心理言語学)。明治大学教授。1999年、シカゴ大学言語学部博士課程修了(Ph.D. in Linguistics、言語学博士)。2000年、立命館大学法学部助教授。2005年、ヨーク大学オズグッドホール・ロースクール修士課程修了、2008年同博士課程単位取得退学。2008年、明治大学法学部准教授。2010年、明治大学法学部教授。司法分野におけるコミュニケーションに関して、言語学、心理学、行動経済学、脳科学などのさまざまな学術分野の知見を融合した多角的な研究を国内外で展開している。著書に『特定の人としかうまく付き合えないのは、結局、あなたの心が冷めているからだ』(クロスメディア・パブリッシング・共著)、『最先端研究で導きだされた「考えすぎない」人の考え方』(サンクチュアリ出版)など。『科学的に証明された すごい習慣大百科』(SBクリエイティブ)は30万部を超えるベストセラー。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます。
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)