本記事は、堀田 秀吾氏の著書『時間をムダにしない人の習慣』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

時間をムダにしない人の習慣
(画像=naka_Studio/stock.adobe.com)

5秒だけ動いてみる

「やる気が出たら動く」ではなく、「動けばやる気が出る」

カリフォルニア大学のベンジャミン・リベットらの研究では、「動作を行おう」と思う脳の意識の信号よりも、実際にその動作を行うための信号のほうが平均0.35秒早いことが確認されています。
たとえば、じゃんけんで「パーを出そう」と思うその瞬間、実は意識するより少し前に、手の筋肉はすでに動き始めています。
私たちは「考えてから動く」と感じていますが、実際には「動き始めたあとに考えている」のです。

つまり、体が先、脳が後。
この順番は、今や脳科学や心理学の世界では常識とされています。
そして、私たちの脳は、「やる気が出たから動く」のではなく、「始めてしまえばやる気が出る」ようにできています。

脳には、人間にやる気を起こさせる「やる気スイッチ」があります。
それは側坐核そくざかくと呼ばれる部位ですが、ここは体から送られる刺激を受けて作動するため、まず体を動かすことが必要です。

脳科学的に見ると、「やりたくない」と感じているとき、脳では本能的な感情を司る大脳辺縁系が強く働いています。
この大脳辺縁系は、危険や不快を避けようとする防衛的なシステムであり、私たちの行動にブレーキをかけるのです。
一方で、理性的に判断し、「やる」と命令を出すのは前頭葉ですが、この前頭葉が働き出すまでには、約5~6秒かかるといわれています。

つまり、「やりたくない」という感情が脳内に生まれてから、前頭葉がそれを抑え込んで行動を起こすまでには、5秒のタイムラグがあるのです。
この仕組みを逆手に取ると、行動を始めるコツが見えてきます。
「やる気を出してから動く」のではなく、まずは「5秒だけ動く」のです。
まずは5秒、体を動かしてみることで、前頭葉が活性化し、脳のエンジンである淡蒼球たんそうきゅうが刺激され、やる気や集中力を生むドーパミンが分泌されます。
やる気も集中力も、気持ちから生まれるものではなく、動き出したあとに生まれるものなのです。
脳研究者である東京大学の池谷裕二教授も、上大岡トメさんとの共著『のうだま やる気の秘密』(幻冬舎)の中で、「やる気が出たからこぶしを上げるのではなく、こぶしを上げたからやる気が出る」と述べています。

やる気が出てから動くのではなく、考えるよりも先に体を動かすことで、脳は「あれ? もう始まっている」と錯覚し、側坐核が自然と働き始め、やる気を起こさせるのです。

「やるべきこと」じゃないことに、つい熱中してしまう理由

ところが、この「体が先、脳が後」という仕組みは、実は望まない方向にもよく働きます。
たとえば、勉強の前に少し部屋を片づけようと掃除を始めたら、止まらなくなってしまった。仕事の前にちょっとスマホをチェックするつもりだったのに、何時間もSNSを眺めてしまった…… といった具合に、やるべきことそっちのけで掃除やSNSに熱中してしまうのは、まさに「体が先に動いて、側坐核が別の方向で活性化した」状態です。

さらに、脳には「嫌だな」「大変そう」と感じると、ストレスを回避するため、「今すぐラクになれる行動」を選ぶクセがあります。
そこに「体が先、脳が後」の法則が加わると、その逃避行動は一気に強化されます。
本来は行動を促すはずの仕組みが、先延ばしの加速装置として働いてしまうのです。
「少し部屋を片づける」「ちょっとスマホを見る」といった行動により体が動くと、その刺激に側坐核が反応し、脳が「やる気スイッチが入った」と勘違いして、やるべきことではない作業にエネルギーを注ぎ込む。
「先延ばしする脳のクセ」と「体が先の法則」が手を組むと、脳はやるべきこととまったく違うことに全力を出してしまいます。
あなたにも思い当たることはありませんか?
しかし逆に、「気持ちのいい別の作業」に集中力と時間を奪われる前に、何も考えずにやるべきことを始めてしまえば、先延ばしをかなり減らせるはずです。

習慣にくっつけて、「動き出し」を軽くする

ここで、「ハビット・スタッキング(習慣の積み重ね)」という方法についてお話ししましょう。
ハビット・スタッキングとは、「すでに定着している習慣のあとに、新しい行動をくっつける」テクニックです。たとえば、

  • 朝、コーヒーを淹れたら、今日のタスクを一つ片づける
  • 音楽をかけたら、重たい仕事を5分だけ始める
  • 歯を磨いたら、メールを1通だけ返信する

このように、「すでに定着している習慣」に、やるべきことにつながる小さな行動をくっつけると、何も考えず、自然と体が動くようになります。
そうすると、「体が先、脳が後」の仕組みにより、やるべきことへのスイッチが入り、先延ばしすることが減っていくわけです。

脳にとって「未知の行動」は多くのエネルギーを消費します。
頭では「やらなきゃ」とわかっていても、実際に行動するのは簡単ではありません。
特に重たいタスクほど、始めるのに負荷がかかります。
だからこそ、「まったく新しい行動」として始めるのではなく、すでにある習慣の延長線上にくっつけることで、動き出しを軽くするのです。

あなたもぜひ、歯磨きをする、コーヒーを飲む、音楽を聴く、帰宅して着替える、といった「毎日当たり前にしていること」のあとに、「重要な作業」を一つくっつけてみてください。

それだけで、「やる気が出たからやる」ではなく、「気づくと自然と始めていた」に変わっていくはずです。

まず体を動かし、習慣のあとに行動をくっつけることで、脳のスイッチが入り、やるべきことを自然に始められる。

時間をムダにしない人の習慣
堀田 秀吾(ほった・しゅうご)
言語学者(法言語学、心理言語学)。明治大学教授。1999年、シカゴ大学言語学部博士課程修了(Ph.D. in Linguistics、言語学博士)。2000年、立命館大学法学部助教授。2005年、ヨーク大学オズグッドホール・ロースクール修士課程修了、2008年同博士課程単位取得退学。2008年、明治大学法学部准教授。2010年、明治大学法学部教授。司法分野におけるコミュニケーションに関して、言語学、心理学、行動経済学、脳科学などのさまざまな学術分野の知見を融合した多角的な研究を国内外で展開している。著書に『特定の人としかうまく付き合えないのは、結局、あなたの心が冷めているからだ』(クロスメディア・パブリッシング・共著)、『最先端研究で導きだされた「考えすぎない」人の考え方』(サンクチュアリ出版)など。『科学的に証明された すごい習慣大百科』(SBクリエイティブ)は30万部を超えるベストセラー。

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