本記事は、秋山 具義氏の著書『こうやって、センスは生まれる』(SBクリエイティブ)の中から一部を抜粋・編集しています。

こうやって、センスは生まれる
(画像=Jumpei/stock.adobe.com)

世界をありのままに見るには?─ 「共通点」と「相違点」

「センスがある人」というと、どこか特別な才能を持って生まれた人を想像するかもしれません。
けれど、センスとは生まれつきの資質ではなく、日々の“感度の使い方”で磨かれるスキルです。
美的感覚や直感の鋭さは、練習によって育つ「知覚の技術」と言い換えることもできます。

センスがいい人は、無意識のうちに頭の中で次のような工程を踏んでいます。

「知覚」─ 世界の「普通」と「半歩先」を知る
「組み替え」─ 世界の「普通」と「半歩先」を組み替える
「表現」─ 「調整+伝わり方」でセンスの精度を上げる

つまり、センスとは「感覚的ひらめき」ではなく、「知覚→ 組み替え→ 表現」という一連のプロセスです。
そして、この最初のフェーズである「知覚」こそ、センスの出発点であり、“感性の筋肉”を鍛える場なのです。

「知覚」は、世界の情報をただ見ることではありません。
自分の“当たり前”と世界の“当たり前”を見比べ、そのズレを感じ取ること。
言い換えれば、知覚とは「センスの種」を拾い集める作業なのです。

世界をありのままに見ることの難しさ

人は誰しも、自分の“常識のメガネ”を通して世界を見ています。
しかし、そのメガネは往々にして曇っています。
私たちは「自分が見たい世界」や「都合のいい解釈」に無意識のうちにフィルターをかけてしまうからです。
たとえば、同じ風景を見ていても、デザイナーは「構図」を見ており、建築家は「空間のバランス」を、マーケターは「人の動線」を見ています。
一つの対象に対して、見えるものも感じるものも違う。
つまり、“世界は一つ”ではなく、“見方の数だけ世界がある”のです。

センスを磨くということは、この「自分のメガネの存在」を自覚することから始まります。
そして、そのメガネを一度外して、“他人のメガネ”で世界を覗いてみること。
その瞬間に、「共通点」と「相違点」が浮かび上がります。

「共通点」を見抜く力─ 世界をつなぐ視点

センスのある人は、まず“共通点”を見抜きます。
異なるものの中に「似ている構造」を見つけるのが上手なのです。

たとえば、自然の樹形と都市の道路網。
どちらも「枝分かれして流れる」という構造を持っています。
音楽のリズムと人の会話のテンポもそうです。
人が心地よく感じるリズムは、どの分野でも驚くほど共通している。

この「共通点を見抜く力」は、物事を“分けずに見る”感性です。
ファッションの色づかいと料理の盛り付け。
建築の曲線とグラフィックの余白。
一見関係のない分野を貫く“法則”を見抜くことで、新しい発想が生まれるのです。

センスの根底には、「世界はつながっている」という洞察があります。
そのつながりを感じ取る人ほど、独自のアイデアを紡ぎ出すことができるのです。

「相違点」を感じ取る力─ 半歩先を見つける感度

一方で、センスのある人は「違い」も恐れません。
むしろ、違いの中に“面白さ”を見出します。
ここでいう違いとは、「他と違うこと」ではなく、「自分の中の違和感」を指します。

たとえば、街を歩いていて、ある看板だけが妙に気になる。
人の話の中で、ある言葉だけが引っかかる。
その“引っかかり”をスルーせずに拾い上げる。
これが、「相違点を感じ取る力」です。

センスとは、実は“違和感を感じ取る勇気”でもあります。
多くの人は、安心するために「平均」に合わせようとします。
しかし、“半歩先”を見つける人は、平均から半歩だけ外れたところに美を見つけるのです。

それは、「普通」と「異端」の間。
つまり、まだ誰も名前をつけていない“新しい普通”を見抜く力です。

「共通点」と「相違点」を往復する

知覚の本質は、この“共通点”と“相違点”の往復運動です。
共通点を見つけることで、世界の構造を理解する。
相違点を見つけることで、新しい発想の種を見つける。
この二つを繰り返すことで、世界の見え方が立体的になります。

たとえば、海外旅行に行ったとき。
街並みや食文化、広告デザイン、接客の仕方─。
あらゆるものが自分の「当たり前」と違う。
その中で、「日本と同じ部分」と「まったく違う部分」を観察してみると、自分の感覚の“偏り”が見えてきます。

この「偏りに気づくこと」こそ、センスの第一歩です。
自分が何を「普通」と感じ、どこに「違和感」を覚えるのか。
それを理解している人は、自分の感性を意識的に使えるようになる。

こうやって、センスは生まれる
秋山 具義(あきやま・ぐぎ)
デイリーフレッシュ株式会社代表取締役、クリエイティブディレクター/アートディレクター。
日本大学芸術学部デザイン学科客員教授。iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授。
1966年秋葉原生まれ。1990年日本大学芸術学部卒業。同年、株式会社I&S(現I&S BBDO)入社。1999年デイリーフレッシュ設立。広告キャンペーン、パッケージ、ロゴ、キャラクターデザインなど幅広い分野でアートディレクションを行う。
主な仕事に、東洋水産「マルちゃん正麺」広告・パッケージデザイン、日本フェンシング協会「新国章」デザイン、松竹「十八代目 中村勘三郎 襲名披露」ポスター、立命館大学コミュニケーションマークデザイン、AKB48「ヘビーローテーション」CDジャケットデザインなど。「日本パッケージデザイン大賞2017」にて「マルちゃん正麺カップ」が金賞受賞。
著書に『世界はデザインでできている』『ファストアイデア25』がある。
2016年より「食べログ」グルメ著名人としても活動。2025年『カイカイキキHidari Zingaro』にて自作の陶芸作品の個展「秋山具義の陶芸展」を開催。

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こうやって、センスは生まれる
  1. “センスがある人”はここが違う、相手の半歩先を出す
  2. 半歩先の視点で変わる、提案が“伝わる”構造
  3. “何を足すか”より“何を捨てるか?” センスは削る勇気で決まる
  4. センスは才能じゃない、共通点と相違点で鍛えられる
  5. センスは天才じゃない、知覚×組み替えの往復で育つ
  6. なぜ良いアイデアが埋もれる? “伝わる形”に変える表現の設計図
  7. 顔を見せなきゃ伝わらない、“人が主役”のプレゼン術
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