本記事は、秋山 具義氏の著書『こうやって、センスは生まれる』(SBクリエイティブ)の中から一部を抜粋・編集しています。

こうやって、センスは生まれる
(画像=ponta1414/stock.adobe.com)

自分の顔も見せて表現─ 「フリップボード式プレゼン」

プレゼンは「舞台」─ 内容だけではなく「伝え方」が命

センスが練り上げられ、資料も調い、クライアントに伝える準備ができたとしても、プレゼンそのものの「見せ方」や「話し方」を誤ると、すべての努力が無駄になることがあります。
プレゼンは単なる「報告」ではなく、一種のステージ。
内容の良し悪しだけでなく、伝達の仕方が相手の理解や印象を大きく左右します。

「包丁の実演販売」をイメージしてください。
目の前で販売員が実際に野菜や果物を鮮やかに切り、目を見て説明する。
あるいは、同じ映像をテレビモニターで眺める。
この二つでは、どちらがより説得力を持つでしょうか?
もちろん、直接目の前で見て販売員の熱意を感じ取るほうが、圧倒的に訴求力があります。
プレゼンも同じで、どれほど優れた企画や資料があっても、「人」を通して伝えなければ相手の心には届きません。

パワーポイントによるスライドプレゼンは便利ですが、視線がスクリーンに集中してしまい、聴き手の感情の動きをつかみにくくなります。
発表者も資料に頼りすぎてしまい、言葉に力がこもらない傾向があります。
クライアントと同じ空間にいても、「同じ方向を見ているだけ」では、対話は生まれません。お互いに目を合わせ、相手の表情を読み取りながら話すことが重要です。

私が提案するのが「フリップボード式プレゼン」。
ワイドショーなどで出演者がフリップボードを持ち、視聴者に向かって解説するスタイルです。
この方法の特徴は、伝えたい内容のすぐ横に発表者の顔があること。
情報と表情が同じ視界に入り、非言語情報も含めて理解が深まります。

「相手の顔」も見えるプレゼン

プレゼンターからもクライアントの表情が見えるため、相手の反応を読み取って臨機応変に説明を調整できます。
これにより、プレゼンが一方通行ではなく「対話」に変わります。

実際にフリップボードを作るのは大変なので、パワーポイントを投影する際にスクリーンやモニターの横に立ち、常に顔を見せながら説明することをおすすめします。
ポインターを使い、アイコンタクトを保ち、相手との距離を縮めましょう。

このスタイルは「紙芝居」にも似ています。
発表者の表情や声の抑揚がストーリーの魅力を引き立て、アイデアに“魂”を吹き込みます。
プレゼンとは、資料だけでなく、人間味で伝えるものなのです。
顔を見せるのは外見を見せることではなく、意志と熱意を伝えることです。
もし顔を見せないなら、資料を読ませれば十分。
ライブ感のある場では、自分自身を通して伝えることが最も効果的です。
「フリップボード式プレゼン」が生み出す効果には以下が考えられます。

  • 相手との距離が縮まる
  • 反応に応じて柔軟に対応できる
  • アイデアに生命が宿る
  • プレゼンター自身の印象が残る

資料を作り込むだけでなく、自分の表情や立ち姿にも意識を向けましょう。
笑顔で始め、姿勢や声のトーンを整えることで、プレゼンそのものの説得力が増します。
自分自身が“プレゼン資料の一部”であるという意識が重要です。
ある意味、コロナ以降に多くなったオンラインでのプレゼンは、「顔を見せる」プレゼンそのものです。
そこでも、カメラを見て話す時間を意識的に増やすなど、画面越しでもライブ感を演出することで、印象に残るプレゼンが可能です。

結論:プレゼンは「顔を見せるコミュニケーション」を

「フリップボード式プレゼン」は、単なる技法ではなく「人として伝える姿勢」の表れです。顔を見せ、目を合わせ、感情を届けることで、情報を超えた信頼が生まれます。
プレゼンとは、資料の提示ではなく“人間関係の構築”であり、その信頼は顔と顔を合わせた瞬間から始まるのです。

こうやって、センスは生まれる
秋山 具義(あきやま・ぐぎ)
デイリーフレッシュ株式会社代表取締役、クリエイティブディレクター/アートディレクター。
日本大学芸術学部デザイン学科客員教授。iU情報経営イノベーション専門職大学客員教授。
1966年秋葉原生まれ。1990年日本大学芸術学部卒業。同年、株式会社I&S(現I&S BBDO)入社。1999年デイリーフレッシュ設立。広告キャンペーン、パッケージ、ロゴ、キャラクターデザインなど幅広い分野でアートディレクションを行う。
主な仕事に、東洋水産「マルちゃん正麺」広告・パッケージデザイン、日本フェンシング協会「新国章」デザイン、松竹「十八代目 中村勘三郎 襲名披露」ポスター、立命館大学コミュニケーションマークデザイン、AKB48「ヘビーローテーション」CDジャケットデザインなど。「日本パッケージデザイン大賞2017」にて「マルちゃん正麺カップ」が金賞受賞。
著書に『世界はデザインでできている』『ファストアイデア25』がある。
2016年より「食べログ」グルメ著名人としても活動。2025年『カイカイキキHidari Zingaro』にて自作の陶芸作品の個展「秋山具義の陶芸展」を開催。

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