本記事は、西 剛志氏の著書『脳科学×最新研究が解き明かす64のテクニック 「伝える」が「伝わる」に変わるひみつ』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。
どう考えてもこちらが正しいことを伝えているのに、納得してくれない
「体験」をしてもらう
脳は「やってみた」で納得する
伝え方NG
ひたすら正論を浴びせ続ける
伝え方OK
言葉で伝えるのはいったんやめ、「体験」の機会をつくる
人は「頭でわかる」より「体でわかる」で動く
人の脳は、言葉で聞いた情報よりも、実際に体験した情報を“現実”として扱います。つまり、
- 言葉だけ→ 抽象的な情報
- 体験→ 具体的な現実(五感の情報)
として処理されるのです。
実際に海外の研究でも、医学部の学生に言葉で教えるよりリアルな心臓に触れさせたほうが理解度が上がったり、VRで大統領を再現して立体的に触れられるようにすると、名前を記憶する力が8.8%アップしたという研究もあります。
正論が効かないのは、「解像度」が足りないから
以前、ある幼稚園の園長先生から、こんな相談を受けました。「先生たちに大切な方針を伝えているのですが、どうしても反発されてしまうんです」園として伝えていたのは、たとえばこんな内容です。
子どもの能力ではなく、努力をほめる・問題が起きたら、落ち着いてすぐ上司に共有する・今までのやり方に固執せず、変化していく。どれも、間違っておらず、むしろ、正しいことばかりです。それでも先生たちは、「今のやり方でも回っている」「そこまで変える必要はない」と反発していたといいます。
ここで起きていたのは、「理解していない」のではなく、「イメージできていない」状態でした。
「体験」は、一気に解像度を引き上げる
園長先生が試したのは、とてもシンプルなことでした。ほかの幼稚園を、実際に見学する機会をつくったのです。
見学に行ったのは、先生同士の連携がよく、子どもへの声かけも工夫されている幼稚園でした。その場を見て、空気を感じて、話を聞いたとき、先生たちの反応が明らかに変わったそうです。
「なるほど、こういうことか」
「言っていた意味がやっとわかった」
言葉では伝わらなかったことが、一度の体験で、まとめて伝わったのです。
体験という「共通の土台」をつくる
人には「脳タイプ」と呼ばれる、情報を受け取りやすい感覚の違いがあります。体験は「視覚」、「聴覚」、「体感覚」のすべてで受け取る五感の体験です。
視覚タイプの人は「人の表情や空間のビジュアル」から気づきを得やすく、聴覚タイプは「生き生きとした声や音」に心を打たれ、体感覚タイプは「職場の熱気や雰囲気、空気感」などに影響を受けて、それぞれの形で効果的に学習していきます。
「自分で気づいた」「自分で理解した」という形で情報を受け取ります。これが、行動が変わる瞬間です。
どうしても納得してもらえないときほど、私たちは言葉を重ねてしまいがちです。でも、言葉が通じない相手に必要なのは、さらに強い言葉ではありません。言葉だけで理解すると、人は「わかったつもり」になりやすいという特徴があります。
図の左側は、この「わかったつもり」の状態を表しています。
言葉を聞くと、頭の中では内容を理解できた気になります。
しかし、その理解は具体的な現実と結びついていないため、行動にはつながりません。
実際にやってみると「思っていたのと違う」と感じることは、誰にでもよくありますよね。これは、言葉だけで理解したときに起こりやすいズレなのです。
一方、図の右側のように体験を通して理解した場合、頭の中の理解と現実が結びつきます。
その結果、「なるほど、こういうことか」と腑に落ち、行動につながりやすくなるのです。
必要なのは、言葉をいったん手放して、体験という「共通の土台」をつくること。そこから先は、相手の脳が勝手に考え、勝手に納得してくれるのです
まとめ
「言葉」で伝わらないときは、「体験」を試してみる。すると状況はガラッと変わる
著作は『1万人の才能を引き出してきた脳科学者が教える 「やりたいこと」の見つけ方』(PHP研究所)、『あなたの世界をガラリと変える 認知バイアスの教科書』(SBクリエイティブ)、『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』(アスコム)、『脳科学的に正しい! 子どもの非認知能力を育てる17の習慣』(あさ出版)、など、海外を含めて脳に関する書籍は累計発行部数45万部を突破。2025年に台湾義守大学日本研究センター顧問に就任。
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