本記事は、西 剛志氏の著書『脳科学×最新研究が解き明かす64のテクニック 「伝える」が「伝わる」に変わるひみつ』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。

脳科学×最新研究が解き明かす64のテクニック 「伝える」が「伝わる」に変わるひみつ
(画像=buritora/stock.adobe.com)

相手が約束を守ってくれないときは?
「事実」と「多数派の行動」を示す
事実と「みんながやっている」という情報は、脳の抵抗を弱める

伝え方NG
●日までにお支払いをお願いします!

伝え方OK
「お支払いいただけない場合、ここまでかかったコストを計算し、請求させていただきます。あなた以外が支払いを完了しています」

約束を守らない側が「逆切れ」する心理

こんな相談を受けたことがあります。

「仕事相手が支払期限を過ぎているのに、ギャラを支払ってくれないんです。何度もお願いをしているのですが、聞く耳を持たずでして。このままなし崩しで払わないつもりなのではと不安なのですが、どうやったらお金を払わせることができるんでしょうか?」

なかなかの問題に直面しているせいか、元気がなさそうで、どうにかしてあげたいと思いました。

ただ、相手に実際に支払うお金がない場合は、もう伝え方うんぬんではどうにもならないので、そういうときは裁判をするなり、ほかの手を打つしかないでしょう。そうではない場合は、伝え方でどうにかなる可能性もゼロではありません。
こういうときに気をつけないといけないのは、やってはいけないコミュニケーションの取り方をしてしまうことです。
特にやってはいけないのが、お金を払わない相手に対して電話やメールで「早く払ってください!」「●月●日までに払ってください!」というお願いをすることです。これはあまり効果的ではないかもしれません。
理由は、「払ってください」という言葉が、相手からすると「命令」に感じられるからです。

脳は命令をされると、「命令に従わないと」と思うわけではありません。むしろ、逆です。「命令に逆らいたくなる」のです。
命令は、相手が罪悪感を持っている場合は効果的なこともあります。
でも、本人の罪悪感や悪いことをした思いが薄い場合は、命令は抵抗や反抗につながります。
お金を払わないのは一般的には悪いことです。普通は罪悪感があり、支払います。しかし、それをしないということは、普通の感覚とかけ離れている証拠です。そういうときは命令しても難しい可能性が高いでしょう。

前頭前野は「事実」をすんなり受け入れる

こういうケースでは、命令(お願い)ではなく、事実を話すというやり方があります。
もしお金を支払ってくれなかったときにどうなるか。その事実をたんたんと伝えるのです。
「お支払いいただけない場合、ここまでかかったコストを計算し、請求させていただきます。また進めている商品の開発はストップになります。もしそれでもお支払いいただけない場合は、担当の私ではなく法務部マターになります」

というようなイメージです。
事実は脳の前頭前野でとらえます。前頭前野は理性を司るところなのですが、その働き方に特徴があります。
「意見」が入ってきた場合は、その意見が自分の考えにマッチするかどうかを前頭前野は検討し、YES、NOの判断をするのです。一方で、「意見」ではなく「事実」が入ってきた場合はどうでしょうか。事実は事実です。なので、そこでの検討は起きず、受け入れようとするのです。

「みんなやっています」の効果

また、お金を支払ってもらうにはどうしたらいいかを研究したものもあります。
イギリス国税庁は税金の未納者が多く困っていました。そこである方法を使って、成果を出しました。なんと督促状による未納金の回収率が57%から86%に高まったのです!
それはこのような言葉を督促状に付け加えたのです。

「大多数のイギリス国民は税金を払っています」

これは脳のバイアスのなかでも「ハーディング」「多数派同調バイアス」といって、多くの人が支持しているものは正しいに違いないと思ってしまう脳の性質です。
ハーディング(Herding)とは英語で「群れをなす」という意味ですが、たとえば、道を歩いていて行列店があったら、入ってみようかと思うのも、このハーディングというバイアスです。

人間は社会的な生き物です。一人で生きることができないことを知っています。なので、多数が同調しているものは生き残るために重要なものと認識してしまうようです。
「長いものには巻かれろ」という言葉もありますが、これが私たちのDNAに刻まれた性質なのかもしれません。

脳科学×最新研究が解き明かす64のテクニック 「伝える」が「伝わる」に変わるひみつ
(画像=脳科学×最新研究が解き明かす64のテクニック 「伝える」が「伝わる」に変わるひみつ)

まとめ
「命令ベース」ではなく「事実」+「多くの場合(人)は〜」で伝えると、相手の脳はすんなりと受け入れ、動きやすくなる

デ脳科学×最新研究が解き明かす64のテクニック 「伝える」が「伝わる」に変わるひみつ
西 剛志(にし・たけゆき)
脳科学者(工学博士)、分子生物学者。1975年生まれ。東京工業大学(現東京科学大学)大学院生命情報専攻卒。博士号を取得後、特許庁を経て、2008年にうまくいく人とそうでない人の違いを研究する会社を設立。世界的に成功している人の脳のしくみ、才能を引き出す方法を提供するサービスを展開し、全国の上場企業から教育機関、高齢者、主婦までこれまで4万人以上に講演会を提供。テレビ朝日系『羽鳥慎一モーニングショー』をはじめ、NHKから日本経済新聞までメディア出演多数。
著作は『1万人の才能を引き出してきた脳科学者が教える 「やりたいこと」の見つけ方』(PHP研究所)、『あなたの世界をガラリと変える 認知バイアスの教科書』(SBクリエイティブ)、『80歳でも脳が老化しない人がやっていること』(アスコム)、『脳科学的に正しい! 子どもの非認知能力を育てる17の習慣』(あさ出版)、など、海外を含めて脳に関する書籍は累計発行部数45万部を突破。2025年に台湾義守大学日本研究センター顧問に就任。

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脳科学×最新研究が解き明かす64のテクニック 「伝える」が「伝わる」に変わるひみつ
  1. 言葉より体験、相手が納得する伝え方
  2. 話が残る人はストーリーで伝えている
  3. なぜ正しい説明が響かない?相手は信頼感で判断している
  4. 払ってください! では動かない、事実と多数派で伝える交渉術
  5. 命令より質問、メンバーが自分で動き出す伝え方
  6. なぜ? ではなく何が? 相手を動かす質問の変え方
  7. 自分の考えが見えないとき、7つの視点で言葉にする方法
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