上場の小売企業による海外M&Aがここへきて活発だ。今年に入って4件を数えるが、4月下旬からの2カ月ほどの間に集中。先陣を切ったのはメガネ専門店「JINS」を展開するジンズホールディングス(HD)で、舞台はフィリピン。年間を通じて2件止まりだった昨年とは様変わりの感がある。
残る3件の買い手は「Zoff」を運営する同じくメガネ専門店のインターメスティック、スポーツ用品大手のゼビオホールディングス、シューズ販売大手のエービーシー・マートで、相手国は順にシンガポール、オーストラリア、韓国。
人口減少に伴う国内市場の縮小や競争激化の中、海外販路の開拓にアクセルを一段と踏み込む形だ。
ジンズHD、フィリピンのFC事業を取得
ジンズHDは大型連休入り前の4月下旬、フィリピンで「JINS」ブランドの店舗をFC(フランチャイズ)展開するSuyen Corporation(マニラ首都圏)から当該事業(8店舗)を7月1日付で取得すると発表した。
フィリピンには2018年に進出したが、直営化への切り替えにより、現地での迅速な事業拡大につなげる。
取得金額は約2億7000万円。規模はさほどではないが、ジンズHDとして海外での買収は今回が初めてとなる。
同社は2010年に中国に進出し、海外事業をスタート。中国のほか、米国、台湾、フィリピン、香港、ベトナム、モンゴルに出店する。約270の海外店舗のうち、9割以上を中国と台湾で占める。
2025年8月期売上高は972億円で、このうちの海外売上高比率は21%。中国をはじめアジア圏では近年、近視人口の増加でメガネ市場が拡大する一方、同社を模倣した競合企業も多数現れているという。
「Zoff」もシンガポールのFCを直営化
ジンズHDとともに、商品の企画・製造・販売を一貫して手がけるメガネ版SPA(製造小売業)による低価格路線を確立し、業界に新風を吹き込んできたのが「Zoff」を展開する同業大手のインターメスティック。
その同社は5月末、シンガポールで「Zoff」ブランドのメガネ店をFC展開する現地企業Zoff I Singaporeを子会社化(6月2日付)すると発表した。取得金額は約6800万円。直営化で事業運営の効率化や意思決定の迅速化を目指す。
Zoff I Singaporeは元々、インターメスティックが2016年に設立したシンガポール子会社だったが、2024年にFC加盟店の事業者に売却しており、それを今回、再び子会社として取り込んだ。
インターメスティックは2009年に進出した中国から2023年に撤退。現在、香港とシンガポールを軸に海外事業に取り組んでいる。香港については現行のFC運営体制を維持する。