上場企業の買収や非公開化などを目的とするTOB(株式公開買い付け)が快進撃を続けている。

2026年の件数が節目の50件(届け出ベース)に到達した。過去最多の年間136件に達した前年のペースは下回るものの、活況状態に変わりはなく、早くも3年連続の100件超えが確実視される。

50件中、MBOは8件

管轄財務局にTOB開始の届け出(公開買付届出書)があった件数をM&A Onlineが集計した。2026年のここまで50件のTOB中、創業家出身の経営者が主導することの多いMBO(経営陣による買収)関連は8件を数える。

区切りとなる50件目のTOBは電気設備工事大手のきんでんが手がける案件で、届け出日は5月26日。三菱電機傘下で同業の弘電社をターゲットとし、同日に1株1万1501円での買い付けが始まった(7月13日まで)。

送配電網の更新・増強需要の拡大が見込まれる一方で人手不足などの課題への対応が求められる中、事業基盤の強化につなげるのがきんでんの狙いだ。

弘電社の親会社で51%余りの株式を保有する三菱電機はTOBに応募せず、TOB成立後に弘電社が実施する自己株式取得(1株8058円)に応じる。三菱電機は親子上場を解消し、成長分野に資金を振り向ける。

一連の取引総額は約850億円で、うちTOB分が488億円。TOBが成立すれば、弘電社の東証スタンダード市場への上場は廃止となる。

M&A Online
(画像=※2026年は5月28日時点。M&A Online集計、「M&A Online」より引用)

歴代2番目の早さ

2025年のTOBは年間136件とこれまでの最多を記録した。途中、大型連休明けの5月9日に50件に達し、さらに同月末までに60件まで件数を伸ばすハイペースだった。

これと比べると、2026年の50件到達までのペースは落ちるとはいえ、歴代2番目の早さ。2007年(104件)以来17年ぶりに年間100件の大台に達した2024年(100件ちょうど)でも50件到達は8月初めだった。

TOB急増の背景に「東証要請」

TOB件数は2023年を境に目に見えて増えている。中核事業の強化や事業ポートフォリオの組み替えを目的とする本来的な買収が活発化。さらには物言う株主の存在感が増す中、経営の自由度を確保するために投資ファンドなどと連携して戦略的に非公開化、つまり上場企業の看板を主体的に下ろす動きがMBO(経営陣による買収)を含めて加速している。

TOB急増の背景にあるのが2023年3月、東京証券取引所がプライム市場とスタンダード市場の上場企業に向けた「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請だ。

業績や資産内容に比べ株価が割安に放置された企業は資本効率に問題があるとして、物言う株主の介入やプレッシャーを受けやすく、企業価値向上や株主還元策などへの対応を従来にも増して迫られている。

2026年のここまで50件のTOBの対象会社をみると、東証プライム14社、東証スタンダード28社、東証グロース5社、東証リート(不動産投資信託)1法人、札幌証券取引所上場1社、非上場1社。

このうち9社については海外企業が買付者となった。また12社では買付者が投資ファンド(海外8、国内4)だった。