本記事は、ミニマリストTakeru氏の著書『人生は「引き算」で軽くなる:ミニマリスト思考で人生を豊かに変える』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
なぜ人は足し算から抜けられないのか
なぜ僕たちは「もっと、もっと」という足し算の生き方から抜け出すことができないのだろうか。
理由はいくつかあるが、一番大きいのは、この社会そのものが「足し算」で成り立っているからだと思う。学校では、より多くの知識を覚え、より高い点数を取ることが評価される。会社に入れば、より多くの成果を出し、より多くの利益を生み出すことが求められる。社会全体が「成長」「拡大」「増加」を前提に動いているため、僕たちは知らず知らずのうちに、「増やすことは良いことだ」と刷り込まれていく。
そして、この社会には強い「競争」の仕組みもある。学校ではテストの点数や偏差値で順位がつき、スポーツでも勝ち負けがはっきりと決まる。大人になってからも、年収や役職、持っているモノや生活の豊かさなど、さまざまな場面で人と比べられることが多い。
すると人は、自然と「誰かよりも多く」と思うようになる。誰かに負けて気持ちのいい人は、ほとんどいないだろう。こうして僕たちは、「もっともっと」と求めてしまうのだ。
さらに厄介なのは、広告やSNSの存在だ。テレビやインターネットを開けば、「これを買えばもっと便利になります」「これを手に入れればもっと幸せになります」といったメッセージが、毎日のように流れてくる。SNSを見れば、誰かの華やかな生活や高価な買い物が目に入り、「自分ももっと頑張らなければ」と感じてしまうこともあるだろう。
本当は今の生活でも十分に満たされていたはずなのに、外から流れてくる情報によって「まだ足りない」と感じさせられてしまう。こうして僕たちは、いつの間にか「もっと多く」を求め続けるレースに参加してしまうのだ。
もう一つの理由は、人間の心理そのものにもある。人は一度手に入れたものにすぐ慣れてしまう。新しい服を買ったときの嬉しさも、新しいスマートフォンを手に入れたときのワクワクも、時間が経てばだんだん当たり前になっていく。すると、また次の何かを求めてしまう。これは心理学で「慣れ」や「順応」と呼ばれる現象だが、こうした仕組みもまた、終わりのない足し算を生み出している。
こうして社会の仕組みと人間の心理が重なり合うことで、「もっと多く」を追い求める流れから抜け出すのは簡単ではなくなる。
しかし、だからといって、その流れにずっと乗り続けなければならないわけではない。
僕自身、かつては足し算の生き方の中で疲れ果ててしまった。だが、ミニマリストという生き方に出会い、「増やすこと」ではなく「減らすこと」に目を向けるようになってから、人生の見え方が少しずつ変わっていった。
もしかすると、豊かさとは「どれだけ持っているか」ではなく、「どれだけ余計なものを抱えずに生きられるか」なのかもしれない。
足し算の社会の中で生きながらも、ときには立ち止まり、自分に問いかけてみる。「これは本当に必要だろうか」「これがなくても生きていけるのではないか」と。その小さな問いこそが、足し算の人生から抜け出す第一歩になるのだと思う。
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