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photo credit: クA迸Ahmed Amir via photopin cc

日本復活の切り札になりえる日本の個人金融資産1500兆円の話について触れてみたい。


【日本の財政がギリシャより深刻って本当?】

日本とギリシャの対GDP比債務残高を比較すると、(今にも破綻しそうで)ユーロから救済措置を受け続けているギリシャより日本の方が圧倒的に深刻なのはご存知だろうか。このように 聞くと、「ヤバイんじゃない!?」って思う人もいると思うが、日本がそう簡単には破綻しない明確な理由が存在する。

それは、日本が世界第二位の個人金融資産1500兆円を保有する国であるということだ。 この1500兆円という莫大な個人金融資産が日本の債務を支えている。 それに加えて、日本の経常収支は 基本的には、 プラスを維持して続けていることというのもある。 (昨年度は震災などの影響でマイナスだったが…)。

ただ、前者が圧倒的に大きい。(※余談だが、最悪の場合、米国債を大量に保有してるからこれを売却すればいいという理論もある。ちなみに、 昨年の11月時点で、日本の米国債保有高は初めて1兆ドルを突破している。)


【日本の個人金融資産 1500兆円 は世界第2位】

私も最初聞いた時に驚いたが、日本の個人金融資産は1500兆円“も”あるのだ。

それにも関わらず、現状は、この資金が有効に活用されていないのは明白であり、日本の貯蓄率が世界で見ても圧倒的に高いのは有名な話であろう。 (家計の金融資産における預金の割合は、米国が14.5%なのに対し、日本が55.3%)

以下に、この非効率な個人金融資産 1500兆円 の活用状況についての考察をしていきたい。


【いかにして“貯蓄から投資へ”の掛け声は消え去ったか?】

振り返ると、小泉政権時に竹中平蔵氏の掛け声の下、政府は“貯蓄から投資へ”を謳い、世界の株高も背景に2005年の日経平均株価は約4割の上昇。円安(当時ドル円は120円台)も連動し“大”投資信託ブームが日本に到来した。 証券会社はもちろんのこと、銀行の窓口では投資信託を売るのが行員の主要業務となっていた。 (ちょうど、この頃にゆうちょでも投資信託の販売が始まった)

当時、国債投信のグロソブ(グローバルソブリンオープン)が5兆円超、ピクテのグロイン(グローバルインカムファンド)や野村アセットマネジメントのマイストーリーが2兆円超を集める等、投資信託の大ヒット商品が連発。世界中の投資信託運用会社の最大手顧客は日本の証券会社や銀行になった(これは今も同)。 これらの商品の投資先は海外の株式や債券であり、日本国民の本格的な海外投資が始まった。

しかし、小泉-竹中体制が降板し、2008年にサブプライムローンバブルが弾け、深刻な金融危機などが起こった。 その後、政権交代も起こった、大震災もあった。このような中で、“貯蓄から投資へ”という合唱は、やがて囀りに変わっていき、最終的には全く聞こえなくなった。

それは、別の大きな問題がより深刻になってしまったからだ。それこそ「財政赤字の深刻化」である。そしてその先にある「日本国債のデフォルト(日本の財政破綻)リスク」だった。

この仕組みについて以下に説明したい。日本の金融機関(特に銀行)は、預かった顧客の資産の多くを日本国債で運用している。企業への融資金額が減少し、国債への投資が年々増加している。つまり、日本国債の需給を主に支えているのは、間接的に日本国民の資産(特に銀行預金)ということになる。もし海外投資が積極化する、又は、海外移住が増加すると、国内資金が海外流出し国債を支えるパイが減少するということに繋がる。それはもちろん破綻へのリスクを一層高めることに繋がる。 それゆえに、政府主導による投資推奨の声は掻き消され、逆に、海外資産への課税等がより厳格化された。 (※武富士事件(海外での資産贈与)納税者勝訴を契機に、海外資産への規制は更に強化されると噂されている。)