◉建設業の許可承継のための条件・経管と専技の確保が最重要

では、具体的に建設会社様の場合における許可承継の条件について述べていきます。
次世代へ現在の許可を承継させるためには、建設会社様の場合には経営業務管理責任者(経管)と専任技術者(専技)の資格を持たれている方を役員に据えられることが中心課題となります。
経管とは、建設業の経営に5年以上携わっておられることを監督官庁に書面で証明できる方をいいます。また、専技とは、建設関係の特定の資格(建築士や土木施工管理技士など)を持っているか10年以上の実務経験を証明できる方を指します(専技の場合には実務経験よりも資格で要件を満たされるケースがほとんどですので、専技の実務経験については省略します)。

ここで、あえて「証明」と申しましたのは、事実としては経営に5年以上関与されていても、監督官庁に対して経営経験を書面(例えば登記事項証明書や5年分の契約書など)で証明できなければ、経営業務管理責任者として認められないためです。

やや余談になりますが、実際の許可申請などの建設業法務をさせていただく際にお客様のお話を伺って「間違いなく5年以上経営経験がおありなのだろうな」と感じたとしても、その事実を証明する書面がないために、建設業の許可を取得できないなどのケースが非常に多くあります。
一時期、建設業界は談合問題、手抜き工事問題、耐震偽装問題などで大変な信用失墜を招いたという苦い経験があります。この影響から現在の建設行政は大変厳しく運用されており、許可申請の際の監督官庁の審査は、悪意すら感じるほど厳しく審査されます。とりわけ、実務経験の証明については非常に厳しい審査が行われています。

このような事情から建設業の事業承継にあたっては、この経管の要件を立証できる後継者がいることがどうしても必要となります。また、専技として許可業種に応じた資格を後継者が取得しておくことが必要となります。
このように建設業の事業承継にあたっては、後継者は経管と専技の要件を証明できる方であることが必要です。

◉早めの事業承継への着手が重要

このように経管が実務経験の立証を要求することから、建設会社様の場合には事業承継には相当早くから着手されることが必要となります。
例えば、ご子息に会社を承継させようと考えられた場合、ご子息が経管の資格を持った後継者として会社を継ぐためには、5年以上登記記録に取締役として名を連ねていなければなりません。

そのため、建設業の事業承継にあたっては、相当早い段階から後継者を選定し、後継者教育をされるとともに取締役として経営陣に編入しておく必要があります。一般的な目安としてですが、男性の死亡率は60歳を超えた時点から著しく向上するというデータがあります。そのため、確実な事業承継のためには50代後半から事業承継を考え出されることが望ましいと言えます。

◉まとめ

私たち行政書士は、伝統的に建設業の法務手続きに関与させていただいております。建設業の許可申請から始まり、毎年の届出(決算変更届)、公共工事の受注のための手続き(経営事項審査、通称、経審(ケイシン)といいます)など建設業には深く関与させていただいております。私は、行政書士以上に建設業界との繋がりが深い士業はないと自負致しております。

建設業界は確かに一時期よりも著しく衰退しています。公共工事の激減に伴いピーク時であった平成12年には60万社あった許可業者様は、平成24年には48万社へ減っているのが現状です。
しかし、建設業は日本の就業人口の10%弱が就労しており、まだまだ日本の基幹産業であることには変わりはありません。また、1社1社様、業者1業者様、1人1人の職人様がそれぞれ独自の技術やアイディアを持って多くの人が利用する建築工事・土木工事などをされており、日本のインフラの基礎を作っておられます。

このような業者様方の技術・就労の場は事業承継を通して次世代に引き継いでいただきたいと建設業法務に携わらせていただく者として願う次第です。

BY S.K(行政書士)

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