◉新規上場による過大評価が株価に反映されている
まず、新規公開株には世間から注目を浴び、需要超過が予測されるわけですから、当然出資を募る企業側もファンダメンタルズ(企業の財務データから計算された企業価値)を上回る価格で公募する場合が多いでしょう。
このファンダメンタルズについてですが、新規公開株において公募価格を幾らにするかというのは企業にとって極めて重要な戦略で、意図的にファンダメンタルズより高く設定されたり、低く設定されたりする事があります。勿論、外部の投資家もファンダメンタルズをある程度分析する事は可能ですが、どうしても経営者と投資家の間に情報の非対称性(取引当事者間に保有する情報について差異があること。効率的な取引を阻害する要因となる。)が存在するので、公開時にはファンダメンタルズより過大評価をしてしまいがちです。
また、上場する時に株式を買う投資家は小口の投資家も多く、小口投資家は大口投資家よりも更に保有する情報が少ない場合が多く、期待だけが先行して公募価格より初値が高くなりやすいという傾向があります。つまり、
情報保有量: 企業経営者 > 大口投資家 > 小口投資家
株価: ファンダメンタルズ < 公募価格 < 上場初値
という関係が成立しやすいわけです。新規公開株の抽選に勝ち抜けば小口投資家も公募価格で購入する事が出来ますが、そうでない場合は、ファンダメンタルズを見誤っている人が多い状況下で上場後に高い価格で購入してしまう可能性が高くなってしまいます。
注:大口投資家には新規公開株の優先割り当てがある事が多いです。ネット証券では完全に平等に抽選が行われている事が多いです。
これらの理由により、新規公開株の初値はファンダメンタルを上回る価格になりやすいので、公募価格で購入出来なかった場合、上場初値で購入すると、一般的に投資のパフォーマンスが悪くなりやすいと言えるでしょう。
◉そんなに期待出来る新規公開株は大口投資家が買ってしまう
ところで、一般的に大きな注目が集まるIPOですが、なぜ個人投資家に熱心な営業がかけられる事があるのでしょうか。その新規公開株が本当に魅力的な投資商品であれば、大口投資家が黙っておらず、彼らが購入する事で、そもそも一般投資家への割り当てが少なくなるでしょう。
その場合、一般投資家が公募価格で購入出来る可能性が低くなり、無理に上場初値で買おうとすると、損失を抱える可能性が高くなると考えられます。
何度も説明している通り、上場初値は公募価格より上回る事が多く、その後は公募価格を下回る時期が続きやすいです。つまり、特に注目が集まる新規公開株は、大口投資家が大量に公募価格で購入し、それを上場初値で売却して利益をあげられますが、上場初値で購入した投資家は、ファンダメンタルズより高く購入した可能性が高く、長期間に渡って悪いパフォーマンスを強いられやすいのです。
◉どうしても新規公開株を買いたい人へ
とは言え、新規公開株には将来の可能性があるので、それでも投資したいという人はいるでしょう。そこで、新しく上場する企業の株式で比較的リターンを高めやすくする方法を紹介しましょう。
(1)新規公開株の抽選に勝ち、上場時に利益を確定させ、その後、価格が下がった場合に買い戻す
(2)上場初値での購入は避け、ある程度下がった時に購入する
(1)の方法は、上場初値が公募価格より高くなりやすい傾向を利用したもので、一度上場時に利益を確定させ、その後に同数だけ買い戻す投資手法です。また、運も必要です。
(2)の方法は、上場後に株価が公募価格を下回りやすい事を利用し、株価がファンダメンタルズに近づいた時に購入する手法です。また、(1)(2)を含めて高いリターンを求めるなら長期保有が重要になります。
但し、将来的に企業価値が上昇する場合にしかこうした投資手法は成立しないので、ハイリスクである事には変わりがない事に注意して下さい。また、新規公開株がアンダープライシング・オーバープライシングの傾向を示さない事も当然あるので、それについても注意が必要です。
BY T.T
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