◉アメリカに見る富裕層の継続性と備え

アメリカは公的な年金制度や社会保険制度が充実していません。年金は国庫負担がありませんから、自分で老後の生活費を積み立てていく形を取ります。医療保険も税金と掛け金という形で存在しますが、日本の様に外来も入院も適用になるわけではありません。そのために、アメリカでは「自分の財産は自分で守る」「自分の将来は自分で決める」という主義が貫かれていますので、富裕層であればあるほど、民間の保険制度や資産管理のアドバイザーの存在が重要になります。

たとえ話として、プロ野球メジャーリーグの選手には年金があります。継続して10年間プレーをすると約2000万円が60歳以降「終身受給」できるのです。自由主義の国からすれば、真に不思議ですが、これはアメリカの労働組合と経営者の力が互角であることを意味しています。
富裕層の人たちには「富裕層を守る弁護士や助言者」が付いてまわります。こうした弁護士や助言者も自らが富裕層になり、社会保障や民間の財産管理、運営を担当するのです。こうして、富裕層の回りには富裕層の専門化が誕生することで、その継続性とあらゆるバックアップ体制が取られます。


◉これからの富裕層に必要な備えとは

日本での富裕層は変化し続けています。ある人たちは財産を現金化せずに、会社が発行する債券(社債)や株式の保有、外貨預金など様々な資産の分散を積極的に行っています。むろん、様々な金融商品が証券会社や銀行から案内されています。
ですが、必要なことは「まとまった財産」を持つことよりも、目的に応じた財産の分別化だといえましょう。自分たちが老後に備える資金と、子供や孫への相続財産は完全に分けるべきです。また、大きな財産を口座に抱えているよりも、株式の配当や不動産による家賃収入の様に定期的な収入がある方が、非常に安定感があります。

アメリカと違い、日本では富裕層に特定したサービスは完璧とは程遠いのが実情です。数千万円もの高級外車や高価な宝飾品を心地よく買える店舗はありますが、持っている資産を自分たちの将来設計に生かす「アドバイスをしてくれる専門家」はごくわずかです。不動産関係者は「マンション経営」を勧めますし、証券マンは「投資信託」を説明するかもしれません。

大事なことは、お金を管理するだけの人、ではなく「自分たちの意向」を汲み取った投資や出資、財産管理やこれから予想される相続図を「分かりやすく説明してくれる人」でしょう。リクエストがあって、専門家は育ちます。まずは信頼できるアドバイザーと巡り合えることが大切です。

BY E.N

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