原油価格の下落は日本や欧州経済のみならず、お隣、韓国経済にも深刻な影響を及ぼしている。韓国政府は原油価格の低下は韓国経済にプラスとの強気の判断を示しているが、原油安は日本同様消費者物価を押し下げる要因となっており、長期化すればデフレ圧力が高まり、経済にマイナスの影響を与えることが懸念され始めている。政府は一貫して否定し続けているものの、一部では既にデフレ状態にあるとの指摘もあり、原油価格の落ち込みは、韓国経済にも大きな影響を与えかねない状況になっている。既にウォン高で輸出産業に大きな打撃が及んでいるたけに追い討ちをかけるようなこの事態を韓国政府がどう乗り切ろうとしているのかに注目が集まるところだ。
韓国にも原油安の悪影響
昨年12月の韓国のCPI(消費者物価指数)は、前年同月比で0.8%増と、15年3ヶ月ぶりの低水準にとどまった。韓国政府は、原油下落は好材料と捉え、原油価格が30%下落すれば1世帯あたりの年間燃料費が50万ウォン(約5万4000円)削減でき、減税や可処分所得増加要因となり消費を刺激すると説明をしている。また現状は物価上昇率がプラスで維持されているため、デフレに陥っていないとしている。
慢性的な円安ウォン高の影響
輸出への依存度が高い韓国経済を悩ませるのが為替相場の円安ウォン高。日本で安倍政権発足以来既に慢性的なウォン高の状況だが、昨年10月末の黒田バズーカ2ではさらに決定的なウォン高を形成するようになっており、輸出企業の収益が圧迫されている。中堅、中小の輸出企業の場合、採算ラインとなるレートは1円=10.4ウォン程度であり、それを超えたウォン高は利益の出ない可能性がでてきている。
韓国企業は円安が加速した日本企業の輸出価格の下落にあわせて、輸出価格の引下げを行っていることから、輸出量全体が腰折れする可能性は低いと思われるが、利益を減らしていることは確かな状態だ。また、この円安ウォン高により、日本から韓国を訪れる観光客は減少し、旅行業界などの非製造業のマインドが冷え込み、設備投資に影響が及ぶ可能性も考えられる。