JT 収益率改善に向けて
JTでは、『たばこ事業』のリスクを分散するために、多角化経営を行ってきている。しかし、たばこ事業以外の事業はほとんど収益が出ておらず、全社ベースでの収益率を押し下げているのも事実である。
同社では、たばこ事業を『国内たばこ事業』、『海外たばこ事業』とセグメントを明確に分け、市場の縮小が続いている国内ではなく、将来性のある海外の市場への取り組みを強化している。そのため、海外の投資家に対するアピールが求められる。海外投資家に対し『収益率』は重要なパフォーマンスとなる。『飲料事業』撤退はリスクの分散効果を下げることと、収益率の改善を行うことを天秤にかけた結果であると考えられる。
事業の選択と集中
『飲料事業』は2期連続で赤字となっているが、『医薬事業』も同様に2014年3月期で約90億円、2013年3月期で約162億円の赤字を計上している。つまり、今回の撤退は過去2年間の収益性だけを見ているものではないのである。
同社の研究開発費に着目すると、2014年3月期で『医薬事業』に約300億円計上しているのに対し、『飲料事業』にはわずか6億円しか投資を行っていない。『医薬事業』のビジネスモデル上、新薬の開発には基礎研究は必須である。また同社は鳥居薬品を買収するなど、『医薬事業』への投資は手厚く行っている。2016年度には黒字化も見えており、投資対効果は十分あると考えている。
しかし、『飲料事業』については、市場で競争していくためには、これまで以上の研究開発費、広告宣伝費などの投資が必要となる。そのため、自社の強みを活かして付加価値を高めていくような事業展開が出来ない以上、投資をせずに撤退するという判断に至ったのではないか。
今回の飲料事業撤退は、海外たばこ事業や医薬事業にリソースを集中させ、将来柱となる事業を見極めたものであると考えられる。(ZUU online)