大手銀行5グループの2014年4~9月期連結決算は象徴的だった。三菱UFJなど3グループは海外部門が好調であり最終利益が増えた一方、みずほフィナンシャルグループと三井住友フィナンシャルグループは減少。
超低金利で国内融資の「利ざや」が縮小する一方で、海外などに収益源を確保できるかどうかで収益力に差が生じている。
海外展開は三菱東京UFJ銀行が一歩リード
三菱東京UFJ銀行とみずほ銀行では融資や債券などの運用利回りと、人件費などを含む資金調達原価の差を示す「総資金利ざや」がマイナスになった。
超低金利の影響を受け、国内ではどれだけ融資を増やしても、もはや利益を得ることができなくなったのだ。にもかかわらず三菱UFJ銀行が収益を増加させることができたのは、海外部門の収益貢献によるものだ。
他行もただ指をくわえていただけではない。三井住友銀行は9月末までの1年間で海外の融資残高を250億ドル(17%)増やしていた。このとき、三井住友フィナンシャルグループ <8316> の宮田孝一社長は、「アジアや米州向けが増え下期も同程度の伸びを見込む」と語っていた。
UFJを追うSMBC
三井住友銀行は中国・上海から猛追を開始した。中国・上海の「中国(上海)自由貿易試験区」に進出する企業向けに「自由貿易口座」を開設するための認可を当局から得た。
現段階で認可を得ている金融機関は米シティバンク、中国光大銀行、上海農商銀行など中国系13行に加え外資系が4行である。日本の金融機関では三井住友銀行が初めてとなる。
これまで中国は企業や金融機関による国外からの資金調達を厳しく規制してきた。その弊害として、中国では資金調達コストが高止まりしていた。
ついに中国人民銀行上海総部は「中国(上海)自由貿易試験区」内に立地する企業と金融機関を対象に国外からの資金調達規制を大幅に緩和する方針を打ち出したのだ。他の邦銀に先駆けて三井住友銀行はこのプロジェクトに乗ったというわけだ。
まだまだ不十分な海外戦略
自由貿易口座の開設により三井住友銀行は試験区内の日系進出企業の効率的な資金管理業務を後押しすることになる。
その一方で三井住友銀行は「アジアでのマルチフランチャイズ戦略の加速」を、中期経営計画の重点テーマとし、企業取引だけではなく、個人も含めたマルチな顧客層にアプローチしていくという戦略を掲げている。
三菱東京UFJ銀行は2015年1月5日にタイのバンコク支店を、同国5番手のアユタヤ銀行と統合した。同行バンコク支店で取引がある日系企業約4000社は、アユタヤの600以上の支店の利用が可能となる。
同時にアユタヤ銀行が擁する3万社以上の取引先と、日系企業とのマッチングも本格化させるだけでは無く、タイでの個人取引の拡充にも意欲を見せている。
一方、みずほ銀行は日系企業と非日系現地企業との取引拡大に力を入れており、アジアでの個人取引拡充に取り組むのは、まだ先になりそうだ。
日本国内は超低金利で利ざやが縮小している。メガバンクはアジアに収益源を求めているがその手法はさまざまであり、三菱UFJ銀行が他行に先んじていることは確かだが、まだまだ取り組みは始まったばかりだ。今後メガバンクのアジア展開の動きは加速することになるだろう。(ZUU online 編集部)
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