SanBio
(写真=SanBio HP)

4月8日、再生細胞治療薬の開発を行うバイオベンチャー、サンバイオ <4592>が、東証マザーズに上場する。

同社は、当初SanBio,Inc.として、2001年2月に米国カリフォルニア州に設立された。その後、2013年2月に、日本法人サンバイオ株式会社が設立され、今回のマザーズ上場承認へ至る。

事業パートナーとして2009年10月に帝人株式会社 <3401> とSB623専用実施権許諾契約締結、2010年9月に大日本住友製薬株式会社 <4506> と共同研究契約を締結して以来、米国にてSB623脳梗塞用途の臨床試験フェーズ1/2を開始している。


脳神経疾患など、治療ニーズのある分野への画期的な治療薬投入を目指す

同社は、再生細胞薬を開発・販売実現へ向けた事業を展開する。製品は他社のライセンス導入品ではなく、自社開発による独自製品で、脳梗塞など、未だ有効な治療法がない脳神経疾患などへ向けた治療薬の実現を目指す。

ビジネスモデルは、大学等研究機関から技術を導入、製造開発、非臨床・臨床試験を実施後、パートナー製薬会社と開発権・販売権ライセンス契約をすることで、契約一時金、マイルストン収入、開発協力金、ロイヤリティ収入、製品供給にかかわる収入などで利益を得るというものだ。

開発中の再生細胞薬は、3種。SB623(フェーズ1/2、神経再生薬−慢性期脳梗塞、網膜疾患、外傷性脳損傷、脊髄損傷、パーキンソン病、アルツハイマー病など向け)、SB618(非臨床段階、機能強化型・間葉系幹細胞薬−多発性硬化症(MS)、末梢神経障害、脊髄損傷など向け)、SB308(研究段階、筋肉幹細胞約−筋ジストロフィーなど向け)である。


フェーズ1-2へ達した慢性期脳梗塞向け神経再生薬

現在、脳梗塞用途の神経再生薬SB623については、帝人株式会社と日本での独占的ライセンス契約を締結している。米国での臨床試験フェーズ1/2の結果を踏まえて日本でも臨床試験が開始される予定だ。

昨年10月には、大日本住友製薬株式会社と、米国・カナダにおける共同開発・独占販売権のライセンス契約を結んだ。2021年3月までの販売を見込む。成功報酬として8000万ドル、販売額の少なくとも10%のロイヤリティー、さらに年間販売額が目標額に達した場合、ロイヤリティーとは別に販売マイルストンとして最大1億2500万ドルが同社へ支払われることになる。慢性期脳梗塞治療薬は現在世界でも販売されているものはない(契約締結時)。

外傷性脳損傷、網膜疾患など、その他の用途についても、日本・北米向け機会に応じて開発及びライセンスアウトを検討している。その他地域でも、地域・疾患ごとにライセンスアウトを検討して行く予定である。


マザーズ上場と目下の業績

2014年1月期は、連結ベースで事業収益2億円に対し、純利益▲5億8900万円の赤字決算であった。今期下期以降、黒字化が視野に入りつつあるが、2015年1月期の決算発表が待たれるところである。

IPO規模としては大型で、公開株式比率は低いが、公開総数747万5千株(2015年3月5日現在の発行済み株式数:3962万484株)。


再生医療の現実

参考までに国内の再生医療市場だが、現時点では、高コスト体質とビジネスモデルの確立されていないことにより、依然成功を収めている企業は存在しないといわれている。ジャスダック市場にリプロセル <4978> がしているが、依然赤字決算が続く。

とはいえ、今後のiPS細胞などを用いる再生医療の実用化・普及により、周辺産業まで含めた再生医療製品の国内市場は、2012年の260億円から2030年には約60倍の1兆5,500億円、2050年には3兆8,000億円まで拡大すると予測されている。また政府は法による環境整備をすすめており、2013年に発表された経済産業省の「再生医療の実用化・産業化に関する報告書」試算によるとこれによる製作コスト削減は、最大2割、治験に係るコストは最大6割に及ぶと報告されている。


収益化への取り組み

この様な分野では、戦略的なポートフォリオを組んで研究開発に取り組んでいく必要がある。戦略的予算配分と投資、プロセス管理とコスト低減、周辺産業の産業化促進、市場拡大の見込める分野や、治療法が無い「患者から求められる」ニーズの高い分野へのシフトなどの、収益・ビジネスモデル構築がもとめられると産業戦略コンサルタントは指摘する。

ブックビルディング期間は、3月23日から27日まで。(ZUU online 編集部)