北陸新幹線
(写真=Thinkstock/Getty Images)

「新幹線が春を連れて、やってくる」。JR金沢駅兼六園口のもてなしドームに掲げられたこのキャッチコピーには、北陸に住む人々の切実な思いが込められていると言っても過言ではないだろう。長く厳しい冬がようやく過ぎる頃、構想発表から約50年が経った新幹線がとうとうやってきたのだ。

少子高齢化や経営資源等の都市部集中が進む中、地方は自律的な社会の持続が求められている。新幹線開業によって大きな注目を集める北陸で、地方創生の鍵を探った。


50年越しの夢が叶った!新幹線開通が迎える局面

北陸新幹線の金沢開業から1ヶ月が経とうとしていた4月の土曜午前、世界で最も美しい駅14選のひとつに選ばれた金沢駅のシンボル鼓門の下には、笑みを浮かべる安倍首相の姿があった。視線の先では、谷本石川県知事が特性パネルを前にして、いかに北陸新幹線が大きな反響を呼んでいるかを熱っぽく説明していた。

開業前、日本政策投資銀行は北陸新幹線がもたらす経済効果を富山県が88億円、石川県が124億円とはじき、両県を訪れる観光客は2~3割増えるとした。蓋を開けてみると金沢の主な観光地である兼六園や金沢城公園、近江町市場などには予想を超える数の観光客が押し寄せている。

北陸新幹線は東海道新幹線開業の翌年に構想が発表され、時の首相だった故佐藤栄作氏が関心を示していながら実現に約50年もの歳月を要した。その間に国内の状況は大きく変化し、地方の疲弊と衰退が深刻な社会問題になっている。

ボルテージを上げながら安倍首相に新幹線効果を説明する谷本知事の脳裏には、地方創生への覚悟が刻まれているだろうことは容易に想像がつく。


地方創生政策を後押しする北陸進出企業

安倍首相が北陸新幹線に乗って金沢を訪れたのは、アベノミクスの主要政策のひとつである地方創生をPRするためにほかならない。

北陸新幹線金沢開業は観光客の増加にとどまらず、すでにさまざまな効果をもたらしている。ジャパンディスプレイ <6740> は金沢市に隣接する白山市に1,700億円を投資してスマホ用の高精細液晶パネルの新工場建設を発表し、YKKは創業者の出身地である富山県魚津市隣りの黒部市に、本社機能の一部を東京から移転させることを発表している。

本社機能の一部を地方に移転させる事例では、ひと足先にコマツ <6301> が創業地である石川県小松市に一部機能を移転させている。コマツの場合は東日本大震災を受け、将来予測される首都直下型地震の影響を回避し、本社機能の東京一ヶ所集中を是正するためだ。

そのコマツでは、本社機能の一部移転による意外な効果が生じているという。小松勤務の女性社員の出生率が、東京勤務の女性社員より2.7倍も高くなっているのだ。小松市は保育園の待機児童がゼロであり、両親は子供を保育園や祖父母に預けて働きに出られるなど、安心して子どもを育てられる環境が整っているのが要因とみられる。

地方ならではの生活が少子高齢化対策に果たす役割は決して小さくない。