2015年4月7日、雪国まいたけ <1378> は、ベインキャピタルによるTOBが成立したとのプレスリリースを発表した。株価も、TOB表明前の200円台からTOB成立後は240円台と、約20%上昇している。雪国まいたけを買収したベインキャピタルの狙いは何なのか、また他の外資系投資ファンドによる買収ケースと比較した相違点は何なのかを見ていきたい。
雪国まいたけのお家騒動
今回のTOB成立の背景には、雪国まいたけの経営権をめぐるお家騒動がある。雪国まいたけは、創業者である大平喜信氏が1975年に創業した「大平もやし店」が起源であり、まいたけ栽培を1982年に始めてから一代で上場にまで成長させたオーナー企業である。しかし、不適切な会計処理による金融商品取引法違反の疑いを受け、大平喜信氏は2013年11月に社長を辞任した。
大平喜信氏は一旦雪国まいたけの経営から手を引いた形になるが、筆頭株主として経営の実権を取り返す機会を狙っていた。社長辞任後の2014年6月、株主総会にて大平喜信氏の実弟である大平安夫氏が、会社提案の取締役人事案と異なる取締役選出の動議を提出。この案に大平喜信氏が賛成したことで、同氏の後任である星名光男氏は代表取締役社長から解任され、元本田技研専務の鈴木克郎氏が代表取締役社長に就任した。
鈴木克郎氏の就任で、再び雪国まいたけの経営に関与し始めた大平氏であるが、銀行に雪国まいたけの株式を担保に入れていたことで、再び支配権を失った。2015年2月23日、第四銀行 <8324> は、TOBの表明とともに雪国まいたけ株式への担保権を実行。
さらに、ベインキャピタルも同じタイミングで雪国まいたけへのTOB開始を表明した。ベインキャピタルのTOB表明時期が第四銀行と同じことから、ベインキャピタルは第四銀行のTOBに応じる確約を事前に取り付けていたものと見られる。このTOBは既出報道の通り成立し、大平喜信氏は雪国まいたけの支配権を失った。
長い期間で上場を狙うベインキャピタル
ベインキャピタルは米国ボストンに本拠がある投資ファンドで、日本での投資案件は、すかいらーく<3197> 、ドミノ・ピザ・ジャパン、ディーアンドエムホールディングス(音響機器・映像機器メーカ:旧日本コロムビアと日本マランツが合併して発足)、そして大江戸温泉物語がある。
ベインキャピタルの投資手法は、TOB又は非上場企業の株式を買収し、非上場の子会社にして年月をかけて育成し、再上場や他ファンドへの売却により利益を上げるというものである。雪国まいたけについても、一旦上場廃止とした後に時間をかけて企業価値を高め、再上場を狙っていくと考えられる。
過去にもベインキャピタルは2011年10月にすかいらーくの株式を買収した。ベインキャピタルが買収した時の価格は負債込みで1,600億円であると言われている。一方、2014年10月の再上場時の初値ベースでの時価総額は約2,300億円。2015年4月20日現在の時価総額は約3,000億円となり、ベインキャピタルは上場により利益を上げたのだ。
また、大江戸温泉物語を経営する非上場の大江戸温泉ホールディングスを2015年2月に買収した。買収時の価格は負債を含め500億円であり、将来の上場を視野に入れているようだ。
ベインキャピタルの投資は、再上場で利益を上げる手法が中心であるが、他社への売却で収益を上げる時もある。2010年に買収し2013年に売却したドミノ・ピザ・ジャパンの場合、購入価格は60億円で、売却価格は180億円程度とも言われている。時間をかけて投資先の企業価値を上げる点は他の投資先と同じだが、上場にはこだわっていないようだ。
他外資系ファンドの投資手法
俗に「ハゲタカファンド」と呼ばれる外資系投資ファンドの投資手法は様々だ。
リップルウッド・ホールディングスは長銀やフェニックスリゾートの買収例から分かるように、経営破たんや再編が起こりそうな企業に対し投資する手法である。長銀の買収では10億円で買収後、自己資金を1,200億円投入し、最終的には新生銀行の上場で2,200億円に売却益を得たとされる。
サッポロホールディングス <2501> やブルドックソース <2804> への敵対的TOBで一躍有名になったスティール・パートナーズは、敵対的買収をいとわず、アクティビストとして積極的に既存株主と対話を図る点が特徴である。
サーベラス・キャピタル・マネジメントは、長期的な株主価値の増大を図る点ではベインキャピタルと投資手法が似ている。西武鉄道や東京北部を地盤とするバス会社の国際興業に投資したが、西武鉄道は西武ホールディングス <9204> として再上場、国際興業には10年間投資した後、2014年に創業家に株式を再売却している。
外資系ファンドに狙われやすいのは?
これまでの投資案件から、外資系ファンドが投資する企業の傾向として、B to Cをビジネスとする企業、業績が冴えない企業、そして創業者や一族が大株主である企業が上げられる。
この傾向が当てはまる企業といえば、先日創業者の親子間でプロキシーファイトを行った大塚家具 <8186> だろう。大塚家具の現在の株価はお家騒動前の1,000円前後を大きく超える1,600円(4月20日終値)であるが、今後株価が下落すれば外資系ファンドの標的となりうる可能性があるかもしれない。(ZUU online 編集部)
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