さて、今回のテーマは「不動産オーナー様の事業承継問題について」です。

不動産オーナー様の事業形態や目的は様々です。個人事業主形態で運営されている方、会社形態の方。老後の年金対策に運営されている方、先祖代々受け継いできた資産管理の為に運営されている方。

様々な方がいらっしゃいますが、どんな方にも平等にやがて次の世代にバトンを渡す時がやって来ます。
今回は不動産オーナー業においての次世代へのバトン継承、事業承継についてご紹介したいと思います。

【参考】
不動産オーナーの経営事情vol.1 〜切っても切れない税金の話〜


◎トラブルになりやすい不動産相続


不動産資産を後世に遺すのは大変な事です。というのも相続問題のトラブルの多くは不動産関連なのです。なぜ不動産はトラブルが多いのでしょうか?その理由として、高額で分割がしづらい、価値がわかりづらいなどが挙げられます。また預貯金と違って現金化も難しいので、相続額が多ければ相続税の納税の資金繰りに苦労する事もあります。

そして、事業承継となるとこれらの問題に新たな問題が加わります。それが公平性の問題です。
事業承継を行う以上、後継者には事業運用に必要な資金をなるべく多く相続させたいと考える不動産オーナー様は多いのですが、後継者以外にも相続人が存在する場合には調整が難しい問題です。遺留分減殺請求の問題がある為です。遺言書を活用したり事業を法人化したりと手段は色々とありますが、基本的には「争族」を避ける為に相続人同志が納得のいく配分である事が大切と言えるでしょう。


◎後継者選任問題


不動産オーナー様の中には「安定した暮らしを子供に残したい」という思いから不動産オーナー業を営んでいる方もいらっしゃいます。そういった方が特に拘られるのが「血族を後継者に」という点です。特に資産が先祖代々の土地ですとその思いは一層強くなるでしょう。
しかし不動産オーナー業は血の繋がりだけで継承できるものではありません。と言うのも、近年は不動産を所有しているだけでは経営が成り立たないどころか廃業の可能性すら出てくる時代になっているのです。そのような背景の中で事業を継続していくとなると、高額な取引を行う度胸や様々な税金に関する知識はもちろん、借金のリスクを背負う覚悟や物件を上手に活用する知識も必要になります。専門家と相談しながら円滑に事業を進める力も必要でしょう。これらの事は誰にでも出来る事ではありません。きちんとした後継者教育を受けたり専門的な勉強が必要になるでしょう。

また、後継者の経営能力に加えて事業継承の意思がある事も大切です。ここでポイントになるのは「強い」意思であるという事です。
血族に重きを置いた事業継承の場合、周囲の目や親孝行、或いは自分の代で資産が無くなるのはご先祖様に申し訳ないといった気持ちから後継者選任を引き受けるケースも見受けられます。しかしこのようなケースはあまりうまく行きません。事業承継は上記のような様々な問題を引き受けるになりますので「仕方無しに」引き受けるようではこれらのシビアな問題を解決出来ないケースが多いのです。
そうした場合には残念ですが、事業にとっても後継者にとっても不幸な結果が待っています。

このように、不動産オーナー業の後継者選任は単純に血の繋がりだけで解決できる問題ではありません。ですのでもし後継者が上記の条件を満たせない場合には、会社の将来を考えて血族の事業承継を諦め、血族以外から後継者を選任する事や会社売却等の思い切った手段を講じる事も必要になるかもしれません。しかし現状として不動産オーナー様の殆どがまず血族を事業承継の候補として検討されており、実際に円満に事業承継並びにその後の経営が円滑に進むケースももちろんあります。

では次は血族から後継者を選び事業承継を行う場合に留意しておきたいポイントについてご紹介したいと思います。