◎血族に事業承継を行う際に留意しておきたいポイント


①公平性

先にも触れました通り、不動産という資産の性質上、問題になるのが相続の際の公平性です。争族を避ける為には均等に分配するのが望ましいのですが、事業承継を行うとなると事業存続の為の財産が後継者に偏るのは否めません。

遺言書を作成して後継者のみに相続させると指定する事は可能です。しかしその場合は他の相続人の遺留分を侵害する事になりますので、遺留分減殺請求をされるリスクがあります。そこで、財産を事業用資産と個人資産に分けた上で配分を遺言状で指定する方法があります。事業用資産とは土地や建物・預貯金・営業権など事業の為に必要な資産です。

財産を分ける事で、事業用資産を後継者に相続させ、個人資産を残りの相続者に相続させる事が可能になります。また、よりスムーズに事業承継を行う場合には法人化も有効でしょう。法人化を行うと生前贈与制度や遺言書、会社法を活用して後継者に財産を集中させる事が可能になります。

このように後継者へ事業継続の為の財産をなるべく公平に相続させる方法はいくつかあります。もちろん方法は大切なのですが、それ以上に相続人同士でよく話し合い納得いく形での財産配分を決める事が、遺留分減殺請求などの問題を発生させない為にも大切な事であると言えるでしょう。

②後継者の意識付けと教育

後継者の意識付けと教育は事業承継並びに以降の経営を円滑に進める為に欠かせません。まずは後継者が事業承継をするという覚悟を持つ事が大切です。先にも触れたように不動産オーナー業は大変ですが、誰もが経験できるものではありません。事業が大きければ大きいほど儘ならない事も多くなります。しかしそれらをチャンスに恵まれたと捉え困難にチャレンジする意思を持つ事は、後継者にとっても事業にとっても今後の大きな動力源となる事でしょう。
その為にも先代は後継者に事業の価値や責任をしっかりと伝え、後継者もそれに誠意を持って応える相互信頼関係の構築が重要です。また、不動産オーナー業を営む上で必要な知識やスキルを身につける事も必要です。経理や総務に関わらせる事で事業の状況を把握したり、先代の仕事を後継者に間近で見せ意思決定能力を鍛えたりと、事業を運営する上でのハウツーを後継者を上手く巻き込んで伝授していく事が必要であると言えるでしょう。

今回は不動産オーナー様の事業承継問題についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
事業で扱う資産の性質上、不動産オーナー業の事業承継は血縁に拘りがちです。しかし、事業の今後は勿論先代や後継候補者の人生の為にも、双方の意思を尊重した結論を導き出す事は疎かに出来ません。血縁に拘ったオーナー様の中には、ご子息の意向に耳を傾けず事業承継を進めようとした結果、親子の絆が壊れてしまった方もいらっしゃいます。

事業はあくまで事業であり、人生を縛るものではありません。人生は個人が自分の意思で決断して決めてゆくものです。そういった意味でも、広い視野を持った事業継承を行う事は大切な事ではないでしょうか。

【参考】
不動産オーナーの経営事情vol.1 〜切っても切れない税金の話〜

by 山崎

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