近江商人の商売方法

近江商人はこのよそ者憲法をベースとして商売基本法を組み立てている。よく知られる「三方よし」はその代表例だ。

三方とは「売り手」「買い手」「世間」の三つを指し、それぞれが良くないと商売はうまくいかないというもの。CSRや社会貢献などを先取りした示唆的な思想として知られるが、売り手と買い手のWIN-WINでなく「世間をよくしないと商売はうまくいかない」と言い切ったところに、近江商人の凄さがある。

「薄利多売」も近江商人の基本法である。いまでは大量生産、大量消費時代の代表的な販売戦略の一つだが、近江商人のそれはもっと哲学的で社会的だ。

「たとえ商品が品薄であっても余分な口銭を取らず、売り手が悔やむくらいの薄い口銭を基本とする考え方で世の中に害を与えないように商売を行うこと」が、薄利多売の本分なのである。うーむ。深い。

他にも「利真於勤(りはつとむるにおいてしんなり)」なる言葉がある。これは「商人が手にする利益は、権力と結託したり、買占めや売り惜しみをしないで、需給を調整して世に貢献する」という考え方だ。うーん、ぐさっ! である。

「天性成行(てんせいなりゆき)」という戒めもある。これは取引における基本を述べたもので、「自分の都合や勝手だけを優先させず、また思惑をせず、自他ともに成り立つことを考えること」を言う。だから損もあれば益することもあるのであり、損益は長期的平均にみることが大事という教えである。

「売って悔やむ」も良く使う。「先々の値上がりを期待して売り惜しみをしない」という商売理念である。

とにかく欲をかかず、目立たず、ひたむきに世間の役に立つことを念頭に商売に取り組む姿勢がそこにはある。

誰とは言わないが、進出した土地の文化やセンスを無視して、弁明を募る商売人たちにこそ、服膺してもらいたい言葉ばかりだ。

イマドキのビジネスは、だいたいそんな感じだ。 (提供: Biglife21)