②株主優待を含めた利回りを考える


従来、海外企業に比べて株主分配を軽視していた日本企業ですが、近年は株主の立場に立った分配を行う企業が徐々に増えてきています。以前は、日本企業は株式の持ち合いをしており、お互いに一定割合の株式を保有する安定株主として存在感を示していました。

しかし、近年は、収益性を重視するようになり、経営に直接関係のない投資からは手を引き始めたため、その流れの中で株式の持ち合いも解消してきています。そこで、敵対的買収から自社を守るためには、個人投資家に長期にわたって株式を保有してもらい、安定株主になってもらう必要が生じてきました。そのため、企業は、配当金の増額や自社株買だけでなく、個人に好まれる株主優待にも積極的に取り組むようになってきているのです。

このような背景から、株主優待を実施している企業が数多く存在するようになったため、個人投資家の方にとっては、そのような企業の株式に対する投資を検討することは有益といえるでしょう。 株主優待を実施していれば、仮に配当金が少なかったとしても(配当利回りが悪いとしても)、株主優待の分も当該企業からの分配ととらえれば、トータルでの配当利回りは高いということが十分想定されます。そのため、投資するに当たっては、配当金や自社株買いの影響だけでなく、株主優待をも含めた利回りを算定し、投資判断を行うことをお勧めします。

もっとも、配当金は現金で分配されるため問題はないものの、株主優待は基本的に、当該企業の製品や割引券といった、物あるいは利用が大きく制限される金券での支給が大半であるため、使い勝手が悪いという声も耳にします。たしかに、自分が利用する物や金券等であれば何ら問題はないでしょうが、利用しない製品や金券等が株主優待として提供されてもあまり有り難くないと感じてしまいます。

しかし、そのような場合でも、利用しないからといって手にした株主優待を放置するのではなく、 売却することで現金化することを考えてみましょう。株主優待が企業の製品の場合には、不用品の買取店に持ち込むことが考えられますし、また株主優待が金券等である場合には、金券ショップへの売却が考えられるでしょう。
その際にも(金券等の場合は特にですが)、ただ株主優待を売却するのではなく、 タイミングを見計らうことで、売却金額は大きく変化することがあるため注意が必要です。 金券等は、利用期間が制限されているため、少しでも利用期間が長い方が高く売れますし、また、市場に当該金券が多く流れているときに売却しても安い値段で買いたたかれてしまいます。そのため、ある程度まとまった株主優待を手にした場合には、 当該株主優待の市場での価格を調査したうえで、売却のタイミングを見計らうことによって多額の収益を手にすることが可能になることでしょう。