③株主優待を活用した株式投資の注意点


株主優待は、上でみてきたように、自ら利用できるものであればその分支出を減らすことが出来ますし、自ら利用しないものでも売却することで相応の収益を手にすることが出来るため有益なものといえます。けれども、有益だからといって、株主優待の内容にのみ注目した株式投資には危険が伴います。その理由としては2つのことが挙げられます。

まず1つ目の注意点は、株主優待の実施は、企業にとって義務ではないということです。 配当金についても無配になることは想定されますが、株式会社という制度上、企業が活動した結果利益を得た場合には、企業の実質的保有者である株主に分配することが前提となっています。しかし、その分配は現金で行えばよく、株主優待という形を採る必要はありません。また、大量の株式を保有している機関投資家にとっては、株主優待は迷惑な存在であり(投資先企業の製品や割引券が大量に送られてきても困ります)、株主優待相当分の現金での分配を望むことが通常です。したがって、株主優待は、企業の判断で急に取り止められる虞があることを認識したうえで、株式投資をする必要があるといえます。

次に2つ目の注意点は、株主優待ばかりに着目してしまい、株式投資の基本である企業の成長性や収益力の分析がおろそかになってしまう虞があるということです。 魅力的な株主優待を行っている企業であっても、成長性や収益力が悪く株価が下落してしまっては、本末転倒です。言い換えれば、継続的に株価が上昇していく企業であれば、株主優待がなかったとしても、株式の売却益で当該企業の商品を購入したりサービスを受けることは可能ですから、株主優待にのみ注目するのは危険といえます。したがって、 株式投資を行う際には、株主優待だけではなく、配当金の多寡や成長性、収益力等も含めた企業の総合的な魅力に着目した銘柄の選別をして頂きたいものです。

現在の日本企業は、個人による安定株主を作り上げるため、あらゆる取り組みを始めています。保有株式数だけではなく、保有期間に応じて株主優待の内容を変えている企業などはその典型例といえます。株主優待を受け続けるためには、当該企業と長期的に付き合うこととなりますので、そのことを踏まえたうえで慎重な投資を行って頂きたいと思います。

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by DY:個人投資家

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