JTやマクドナルドが陥った「ボリュームゾーン不況」とは?

JT <2914> が、2月に飲料部門から撤退すると発表し、世間に衝撃を与えた。「桃の天然水」などのヒット商品を送り出してきただけでなく味にも定評があり、禁煙化が進む中、たばこ事業からの転換を押し進めていくものと思われていたからだ。

また、マクドナルドでも定番であるチーズバーガーを大量生産してきたが、最近はそのボリュームゾーンに飽きがきている。

清涼飲料水などに限らず、多くの一般消費者をターゲットにした商品の売れ行きが落ちている状況を「ボリュームゾーン不況」と呼んでいる。ボリュームゾーンとは、商品やサービスの中で最も売れる中間所得層の購入価格帯を指し、大量に生産して売れる商品群ともいえる。例えて言うなら、富裕層向けの高額なフェラーリではなく、一般の人が多く購入するホンダ『N-BOX』のような価格帯の商品のことである。そして、ボリュームゾーン不況とは、このような一般の人が多く買うような商品が売れない、あるいは、一時的に売れても、すぐに飽きられて売れなくなってしまうという状況をいう。


ITの進歩で加速度的に起こるボリュームゾーン不況

では、なぜ今ボリュームゾーン不況に陥っているのだろうか。その原因のひとつとしては、インターネットの普及がある。ソーシャルネットワークも含め、多くの情報が容易に発信されるようになり、また、その伝達の速度も早いため、影響力のある人が一言つぶやくと、その内容は一気に拡散する。インターネットが普及する以前のクチコミはリアルコミュニケーションでしか伝達しなかったため、広まるには相当の時間が掛かっていた。しかし、現在では、面識のない人が発するクチコミを信用し、レストランを選ぶ時代になっている。

そのため、行きたいレストランがあれば、まずはクチコミサイトを見て、高い評価かどうかを確認する。結果として、高評価の店には客が殺到する。しかし、訪れる客が増えれば、当然不満を言う客も出てくる。そして、クチコミで「思ったよりたいしたことない」などとネガティブな評価が書かれるようになると、一気に客足は遠のいてしまうのだ。

かつてはクチコミにより高評価が伝わるには時間が掛かったので、急激に売れることもなかった。また逆に、不満があっとしてもそれが広まるには時間が掛かったので、商品寿命も長かったのだ。ところが、インターネットの普及により、高評価が伝えられれば一気に売れ、逆に低い評価が与えられれば一気に売れなくなるため、商品寿命が短くなっているのである。

かつて流行った「食べるラー油」なども、テレビやネットでおいしいと誰かがいうと売り切れが続出して商品の供給ができないほどの状況になった。しかし、増産体制が整う頃にはネガティブな情報もではじめて、結果として商品は在庫の山となるのだ。