楽天 <4755> が2014年12月期の連結決算を発表した。これによると、売上高5,985億円、営業利益1,064億円と、営業利益が1,000億円を超えるのは初となり、過去最高の営業利益となった。

業績を牽引しているのは、本業である楽天市場と楽天トラベルによるものだ。楽天市場と楽天トラベルを合わせた売上高は1,885億円、営業利益937億円と営業利益の9割を稼ぎ出している。

次に、売上高が大きいのは、楽天市場で利用できる楽天カードや、楽天銀行、楽天証券といった金融部門で、2,365億円、営業利益484億円と、大いに業績に貢献している。

これら営業利益の合計は、すでに1,000億円を突破しているが、営業損失を出している部門もある。Koboといった電子書籍等を扱うデジタルコンテンツ部門や、米国や英国におけるEC事業だ。売上高が1,742億円あるにもかかわらず、営業損失が349億円と振るわない。さらには、買収したモバイルメッセージングサービスのViberや、東北楽天ゴールデンイーグルスといった野球チームも抱えている。


拡大する「楽天経済圏」とは

楽天の戦略の核となるものがある。それが「楽天経済圏」という考え方だ。

楽天経済圏とは、楽天IDを軸とし、楽天市場経由で購入したときに付与される「楽天スーパーポイント」によって結ばれる企業グループ内でのつながりだ。これによりネットとリアルの融合を目指している。特に顧客を管理する際の共通のIDとして楽天IDを活用できるため、顧客の消費動向におけるビッグデータ分析の活用など応用範囲は広い。

「楽天スーパーポイント」を実店舗で利用する場合「楽天カード」や「楽天Edy」で決済することで、これまでは「貯める」ことが出来るのみであった。昨年10月から実店舗でも利用可能な「Rポイントカード」サービスを開始し、サークルK・サンクス、出光サービスステーション、ミスタードーナツ、大丸、松坂屋、ポプラ等、加盟店約1万3,300店舗と広範囲なサービスにおける利用が可能となった。今後もRポイントカードの利用範囲を拡大していく戦略だ。


これからの楽天の戦い方

仮想通貨ともいうべき「楽天スーパーポイント」であるが、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)傘下のTポイント・ジャパンが運営する「Tポイント」や、コンビニエンス大手ローソンの「Ponta(ポンタ)」が実店舗での利用という点で大きく先行している。Tポイントは、実店舗で利用していたものをネットでも使えるように移行しているという、ネットから実店舗での利用という楽天とは逆の流れで普及させている点が興味深い。

TポイントやPontaは実店舗では普及しているが、楽天はすでに9,400万人近い会員を抱える点が強みだ。Tポイントのように加盟店を地道に広げていくのではなく、楽天市場はもちろん、楽天トラベル、楽天銀行といったグループ企業の力を活用できるメリットも大きい。

これまでネットでの販売で蓄積された顧客データをマーケティングに応用すべく、データの共有も進んでいる。「販売の場」を提供してきた楽天が、近い将来「情報」で稼ぐようになるのも時間の問題だろう。

(ZUU online 編集部)

【関連記事】
史上最高益を見込むトヨタ、利益還元は当然なのか
スカイマーク破綻には前兆があった?経営者が学ぶべき教訓
日経新聞を含む過去1年分の新聞記事が全て閲覧可?ネット証券の意外な活用方法とは?
注目されているROE経営、なぜ今まで注目されなかったのか?
10万円以下でも買える?2015年の目玉LINE株を上場前に買う2つの方法