武器は日本最大の診療データベース 蓄積情報の利活用で商機拡大
昨年12月16日に東証マザーズへ株式上場したメディカル・データ・ビジョン <3902> は、医療機関向けの経営支援システムの提供と医療・健康情報の利活用を手掛ける企業だ。
「医療現場のIT化」という成長市場において躍進著しいベンチャー企業とあって、初値は公募価格の約2・4倍となる1万2220円を付けた。関心と期待を集めているのは『医療版ビッグデータビジネス』の将来性だ。今回は同社を率いる岩崎博之社長に迫る。
日本最大の診療データベースを運用しているのが、メディカル・データ・ビジョンだ。当該データベースは、医療機関から二次利用の許諾を得た上で構築しており、その情報量は、2015年3月末現在でなんと約974万人分を誇る。日本の総人口1億2700万人では7%程度だが、北欧スウェーデン一国の人口とほぼ同じだ。
「このビッグデータを利活用することで日本医療・健康分野の革新に貢献できる」岩崎社長は胸を張る。同社は、この大規模な診療データベースから、病院における薬剤の処方実態に関する各種分析データを、製薬会社や研究機関に提供している。
このようなデータを活用することで、より良い医療・健康分野への道筋が開けてくる。例えば製薬会社は、これまで出荷ベースでしか把握できなかった薬剤の使用状況を、実際に処方されたデータの解析を進めることで把握できるようになった。
特定の薬に対する患者数や処方の状況が明確になったことで、市場マーケティング戦略は大きく変化しつつある。メディカル・データ・ビジョンは医療業界向けの各種システム提供を通じて医療・健康データを集積する「データネットワークサービス」と、集積したデータを活用(二次利用の許諾を得たデータのみを利用)した「データ利活用サービス」の2本を軸に事業を構成している。
データネットワークサービスでは、病院等へ向けた経営支援システム等を提供。システム導入だけでなく、継続性の強いアフターメンテナンスサービスが強みだ。
初期導入費とシステム利用料が収入源となっている。2014年12月期の同事業の売上高は、前期比15・3%増の12億1300万円。データ利活用サービスは、製薬会社・研究機関向けのデータ解析サービスが伸長中で、同売上高は前期比54・5%増の7億3700万円となった。2014年12月期業績と2015年12月期の業績予想は次の通りだ。
■2014年12月期通期業績
売上高:19億5000万円(前期比27・5%増)
営業利益:2億6000万円(同24・2%増)
経常利益:2億4800万円(同18・1%増)
当期純利益:1億3500万円(同33・9%減)
■2015年12月期通期業績予想
売上高:26億2200万円(前期比34・4%増)
営業利益:2億6200万円(同0・6%増)
経常利益:2億6200万円(同5・5%増)
当期純利益:1億4600万円(同7・8%増)