病院向け業務ソフト「EVE」高シェア獲得までの道程

日本最大の診療データを背景に事業展開を行う同社だが、その端緒となったのは、創業期に手掛けたDPC分析システムだった。同社の主力商品である「EVE(イブ)」である。

2003年4月から施行された医療費の定額支払い制度(DPC制度)に対応した分析システムだ。このDPC制度とは、入院時の包括払い制度のこと。医療費の適正化、診療データ等の開示による透明性・医療の向上を目的として、2003年に厚生労働省が導入している。

同制度対象病院には、厚生労働省への診療データ提出が義務付けられた。これまで全ての診療行為ごとに出来高で報酬が支払われてきたが、DPC制度下では部分的な出来高と定額払いを組み合わせて報酬が支払われる仕組みに変わった。

つまり、効率的でない医療行為を行っている病院は、定額報酬を超えるコストがかかってしまうことになるのだった。病院としては、より効果的で効率的な診療を実施することで収入が増えるメリットがある。DPC対象病院は、同制度下での経営インパクトや自院の診療内容を分析する必要があったため、同社の「EVE」が受け入れられたのだった。

DPC対象病院は中規模~大病院が多く、導入メリットも大きい。2006年の発売開始以降、導入病院数は順調に伸び、2014年には1585のDPC対象病院のうち、42・4%のシェアを誇るまでになった。

「開発を始めたタイミングが抜群に良かったことも要因です」岩崎社長は振り返るが、時勢に合わせたシステム開発はさることながら、病院関係者や医師たちとの密接な人的ネットワークをじっくりと構築してきたことが、ここまでのシェアを獲得した礎になっている。

「EVE」がスタートを切って間もない頃から、岩崎社長が熱心に続けているのが「ユーザー会」の活動だ。医療現場のトレンドなどを話し合ったり、講演を行ったりするセミナー・勉強会などを主催するなど、医療機関との信頼関係を強固にすべく活動している。

ただ販売するだけでなく、ユーザー会を通じて「アフターメンテナンス」対応を行ってきたことで、顧客満足度は必然的に高まり、顧客と同社との信頼性は深まっていった。

「今では1会場250人のセミナーが即満員になります。前回も慌てて席を追加したほどです。前年は年間で1200人を超える参加者にご来場いただきました」強固な人的ネットワークと、最先端ICTを活用した利便性の高いデータネットワークがメディカル・データ・ビジョンの核なのである。


更なる成長に向けて積極投資へ

岩崎社長は同社中期的な成長イメージとして「売上高成長率は毎年30%前後」、「経常利益率目標は10%前後」を掲げている。

「電子カルテソリューションの提供に取り組むとともに、個人から同意を得た診療データを蓄積し、個人が診療情報を管理できる仕組みを構築していきます。診療データは毎日大量に発生しています。しかし、それらが有効活用されているとは言い難いでしょう。

そもそも生活者においても、多くの方が自分の診療データすら手元にないのが現状です。私は、一生活者として自分自身の健康情報を把握したいと思っていましたし、方々に散らばっている医療や健康情報を利活用することで、より一層の医療の質向上が期待できるとも考えています」

まずは、病院向け電子カルテソリューションを3病院に試験導入。実証を得た後に、広域での拡販を目指すという。ここで蓄積した個人ごとの診療データをもとに、将来的に医療・健康関連企業に向けたデータ利活用へと広げていきたい構えだ。

健康管理サービスの市場性は2020年に1000億円市場になるとも言われている。岩崎社長率いるメディカル・データ・ビジョンは既に、5年先を見つめているのだ。

(記事提供: 株主手帳 )

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