成功者の借金


一方で、こんなことをおっしゃる方々もいらっしゃいます。 アパレル業で成功をされているGさんにお尋ねしました。

G:「住宅ローンを組む、という考えが私には理解できません。 1・2年先ですらどうなるか判らないのに… 20年も30年もローンを組めるなんて、おそらくその方々は、よほどしっかりした所にお勤めなのだと、推測します。」

では、借金はされない、ということですか?

G:「いえ、借金はします。 うちの洋服屋は、今は全部で4軒チェーン展開をしていますが、全部借金で作りました。」

なるほど、それが住宅ローンとはどう違うのですか?

G:「住宅は、絶対に利益は産まないじゃないですか。 住んでいるだけですから。 だから、20年も30年も払うわけです。 だけど、お店なら、利益を生むじゃないですか。 利益を生めば、完済も速い。 速いときは、1年以内で払い終われる。」

必ずしも、利益が出るとは限らないですよね。 そんなときは、どうしますか?

G:「そうなんですよ… 撤退か継続か… その辺が難しいところですね。 店閉じたら、雇った人を解雇もしなきゃいけないこともあるでしょうから…」

今まで、そういうこともありましたか?

G:「えぇぇ… 1軒ありました… 解雇はしたくなかったので、正社員を何人か投入しました。 あとは、学生のアルバイトを入れて… あのバイトさんには、気の毒なことをしました。」

フランチャイズにすれば、リスクは減るんじゃないですか?

G:「お金だけを考えれば、確かにそうですが、今のところは考えていません。 閉店した場合、フランチャイジーさんは、借金を抱えて、大変苦しむことになる。 我々としては、フランチャイジーさんを育てる作業も大変ですし、あちらの持つべき裁量とこっちがお願いする方針のバランスが大変です。 しかし、なにより…」

一息つかれた後、続けられました。

G:「なにより、その店が閉店になった場合、『また、あの店潰れた』なんて噂が立つのは、大変なダメージです。 以前、一軒閉店したとき、『Gちゃん(この方の名前)、大丈夫?』なんて訊かれました。 だから、今、店を増やすときは、リスクを抱えてでも、ローンを組んで、本社とかから熟練を送り込んで、店を開いたほうが良いですね。 もちろん、さっきみたいに失敗することもありますが…」

なるほど、よく解りました。 開店用の担保はどうされていますか?

G:「保証人は私がなります。 担保は私が持っている、いわゆる『遊んでいる不動産』を担保にします。 『遊んでいる』というのは語弊がありますね。 小さなマンションなので、多少の収益はあります。 たとえば、○○駅近くに店を開くとして、銀行から借りますが、私が所有するそのマンションを担保にいれるわけです。」

そのマンションを持っていかれたことはありますか?

G:「まだですね! でも、色んな物件をもっていると、責任も増えるし、住民の方々にとっては大事な場所なので、正直、そんな物件を持っていること自体に、気が重くなることはあります…」

借金を節税対策として考えたことはありますか?

G:「あります。 でも、利息とか税務署の目を考えると、考えるだけ割に合わないですね。 色々小細工は考えずに、純粋に事業用の借金しているだけです。」

Gさんにとって、借金とは何ですか?

G:「借金とは、『お金を呼ぶもの』です。 利益を生まないローンは危険過ぎます。 ただし、残念ながら、ウチの役員でも、住宅ローンを組んでる者がいて、正直、こんな金銭感覚を持っている者が近くにいると、とても不安に感じます。 飯川さんはどうですか?!」

私は借家に住んでます。 将来もローンを組んでまで家が欲しいとはおもわないです…

G:「そうなんですよ! 私は今でも賃貸マンションに住んでます。 つまるところ、色々と所有はしないほうが良いんですよ。 利益を産まない宝石とか調度品を持っていても良いことはありませんね。」


持ち物は利益を産むべきもの

ちなみに、Gさんは、BMWを一台所有されていますが、これは現金で買われたそうです。

G:「あれは、乗せたお客さんに『ちょっとは余裕がありますよ』と印象付けるための小道具で、日頃は軽トラックを運転してます。」

このGさんという成功者にとって、持ち物とは「利益を産むべき物」で、借金とは、その利益を産むための、いわば投資である、という印象を受けました。

贅沢品や快楽、または住居など、利益を全く産まない物のために借金をする、とは一線を画す、まさに、成功するべくして、成功している人達の考え方、借金の仕方なのです。


BY 飯川慶

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