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(この記事は2015年5月26日に「 Biglife21 」掲載されたものです。 文=岸田康雄)

相続税は、平成24年度(2012年度)の税収でも1.4兆円ほどしかなく、国税総額の約3%に過ぎません。相続税収は極めて低い水準であり、日本は富裕層に優しい国だということができました。

過去においては、相続税はもっぱら減税の対象とされてきました。バブルの時期に株価や地価が高騰し、遺産価格が大きくなって相続税の支払いが困難となり、それが社会問題化したからです。そこで、平成4年(1992年)と平成6年(1994年)に相続税負担は大幅に軽減されました。

しかしながら、その後の経過をみますと、バブル期の地価急騰に伴って引き上げられてきた基礎控除が、地価が下落してもそのまま据え置かれているために、課税ベースが著しく縮小しています。それと同時に、最高税率の引き下げを含む税率構造の緩和も行われた結果、「資産再分配機能」が低下しています。


課税割合の減少

今後の財政再建のための税収確保のためにも相続税を増税すべきだという観点もあるでしょう。しかし、今日では、税収確保という観点よりむしろ、課税の公平の観点から「資産再分配機能」が重視され、ストック面での格差是正の観点から、相続税の増税が注目されるようになりました。

日本では死亡者の数が年々増加しています。少子高齢化が進み、出生者の数を死亡者の数がはるかに凌駕しています。しかしながら、被相続人の数が増加の一途にあることに対して、課税対象者がほとんど増えておらず、課税割合は4%台まで下がってしまったのです。

国税庁が発表した平成23年度(2012年)の相続税の申告状況によれば、被相続人数(死亡者数)は約125万人(前年約120万人)、このうち相続税の課税対象となった被相続人数は約5万1千人(前年約5万人)で、課税割合は4.1%(前年4.2%)となっており、前年より0.1ポイント低下しました。