税制改正による相続税増税

そこで、昨年の税制改正では、相続税の増税が図られることになりました。具体的には、平成27年(2015年)から基礎控除の引き下げ等を通じた課税ベースの拡大、最高税率の引き上げを含む税率構造の見直しが行われることになりました。

これは、課税割合(相続税がかかる資産を遺す者の割合)を4.2%から6~7%に引き上げたいという狙いに基づくものです。首都圏では15%程度まで上昇することが予想されています。

相続税の課税価格は、平成23年(2011年)に10兆7299億円(前年10兆4580億円)で、被相続人1人当たりでは2億872万円(前年2億962万円)となっています。これに伴って支払われた相続税額は1兆2520億円(前年1兆1754億円)で、被相続人1人当たりでは2435万円(前年2356万円)となっています。

ちなみに、相続財産の金額の構成比は、土地46.0%(前年48.3%)、現金・預貯金等24.2%(前年23.3%)、有価証券13.0%(前年12.1%)の順となっています。それゆえ、現金化しづらい土地が半分を占めており、相続税を現金で払うのが難しい状況は相変わらずです。

基礎控除が3000万円+600万円×法定相続人数へ引き下げるとともに、最高税率を55%に引き上げる等税率構造の見直しが行われることになりました。

この結果、配偶者と子供2人を相続人と想定すれば、二次相続まで合計して、課税価格1億円の相続人にとっては295万円の増税、課税価格5億円の相続人にとっては2400万円の増税、課税価格20億円の相続人にとっては4890万円の増税となります。


富裕層以外にも予想外の負担

また、以下の要件に該当するような資産家の場合、いわゆる富裕層には該当していなくても、改正後は、一次・二次相続を通算して数百万円の相続税が課税される可能性が高くなります。

・都内に一戸建ての自宅を所有している
・上場企業等に20~30年ほど勤務し、数千万円の退職金受領予定がある
・自身の死亡時に遺族に支給される生命保険金が数千万円ある
・子供は結婚等して持ち家があり、既に独立して生計を立てている

以上のように、平成27年度(2015年)以降は、相続税負担が著しく重くなります。

実務上の対応として必要となるのは、まずは個人財産の棚卸を行い、相続税額を試算することです。特に、改正後、最初に「二次相続」となる場合(配偶者と死別している場合)には一次相続よりも税負担が大きくなることに注意しなければなりません(配偶者控除が使えないからです)。

生前に次世代等へ財産を移転しておく相続対策がこれまで以上に重要となります!(提供:Biglife21)

【関連記事】
企業の成長は、企業の「素人力」が担う
就業規則の重要性とメリット
日本の風景が変わる!CLTを使って木造高層ビルに挑め!
株式会社ウエノ‐技術を上げて価格を下げた新開発コイルでシェア巻き取り!
ある発明家の回想 モーメントパワー発電装置