企業のデレバレッジや弱いリスクテイク力の恒常化が、内需低迷やデフレの長期化の原因になっていると考えられる。デフレで景気が悪いから、企業活動が弱いのか、企業活動が弱いからデフレなのか、因果関係は明確ではない。
企業活動の低迷はデフレの結果であるとともに、デフレの長期化をもたらす原因となったと考えられる。景気後退に陥り、デフレギャップ(需給ギャップ、需要不足)が開けば、物価は下落することになる。物価下落による実質所得の増加などが総需要を刺激することにより、通常、デフレは短期間で収束するはずだ。
しかし、日本では、企業のデレバレッジや弱いリスクテイク力が恒常化してしまうと、企業の貯蓄行動が、企業と家計の資金の連鎖からドロップアウトしてしまう過剰貯蓄として、総需要を破壊する力になってしまっている。
企業からの総需要を破壊する力があれば、実質所得の増加で総需要を刺激する力だけではデフレギャップを閉じることができず、内需低迷とデフレは長期化してしまうことになる。内需低迷とデフレを構造的に打破するためには、企業活動の活性化、即ち企業のデレバレッジを止め、リスクテイク力を強くしていかなければならない。
黒田東彦日銀総裁は2013年12月25日の講演で「15年近くに及ぶデフレのもとで、日本経済には『物価が上がらない』、あるいは『物価が緩やかに低下する』ことを前提とした体質が定着してしまった」と指摘している。
これも言い換えれば、日本経済には企業のデレバレッジや弱いリスクテイク力を前提とした体質が定着してしまい、それがリストラによる総供給削減以上に総需要を追加的に破壊してしまうため、総需要が均衡に戻れず、デフレ期待も定着してしまい、それが企業の更なるデレバレッジとリストラを促すという悪循環に陥ってしまったと言える。