ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物価格は、2011年に1900ドル台をつけて以降、下落トレンドとなっている。現在では1200ドル程度で取引されているが、今後どのような値動きとなるのだろうか。米ドルとの関係を考慮しつつ、考えていきたい。

金価格上昇の理由

まず、金価格が2011年まで長期上昇を続けていた理由は何か。要因はいくつか考えられるが、主だったものを挙げれば、①新興国を中心とした宝飾品などの金需要および国家の金備蓄、②金ETFの一般化、③先進国を中心とした量的金融緩和政策およびリーマンショックである。

BRICsと呼ばれる、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカなどの新興国では、経済成長に伴い、宝飾品としての金需要が増加した。特にインドでは、繁栄の象徴として金を身につける文化があるため、増加の一途をたどった。また、中央銀行による金保有量も増加。金ETFの一般化によって、ポートフォリオに金が組み込まれ、株式市場の資金が金(現物および先物)市場になだれ込んだことも一因である。

しかしながら、最も大きい理由は、量的金融緩和政策とリーマンショックだ。事実、2000年以降上昇し続けていた金価格だが、2008年のリーマンショック以降、その上昇がさらに加速している。リーマンショックをきっかけに、先進国の投資格付けの引き下げが相次ぎ、量的金融緩和による通貨安が進んだ。

投資格付けが下がることで通貨の信用力も低下し、行き場を失ったマネーが金市場に流入したのである。加えて、金利引き下げや市中への通貨供給量を増加させる金融緩和政策のため、金利があまりつかなくなり、価値も下落傾向となった。これも、金へと資金を向かわせた理由なのである。

金価格下落の理由

ではなぜ、2011年以降、金価格は下落しているのだろうか。新興国の景気減速など、いくつか理由は考えられるものの、最も大きい要因は、米国経済の回復である。米国では、QEと呼ばれる量的緩和政策を2008年より続けていた。

QEは実施時期によりQE1~3に分けられ、徐々にその規模を縮小していたが、2014年10月に連邦準備銀行(FRB)がQE3の終了を決定した。この結果、米ドルの通貨安に歯止めがかかり、米ドルが買われる動きが強まったのである。

現在では、米国の利上げ時期が注目されている。4月の連邦公開市場委員会(FOMC)声明では、「雇用環境がさらに改善し、インフレ率が目標の年2%に近づくという相当の自信が持てた時」が利上げのタイミングとしており、イエレンFRB議長の5月22日の講演では、「今年のいずれかの時期に利上げを始めるのが適切」と述べられるなど、米国の利上げ時期が近づいてきている。

米国が利上げするということは、金利が上昇するということである。金利のつかない米ドルを嫌気して、金価格が上昇していた経緯から、保有しても金利がつかない金を売って、米ドルが買われる流れとなったのである。