住宅取得資金,相続対策
(写真=PIXTA)


「住宅取得資金の贈与税」の特例とは?

住宅を購入する際はまとまった金額が欠かせない。そこで、両親や祖父母といった近親から金銭援助を受けるケースが多いが、その分は「特例」として、非課税扱いにしてもらえる。

昨年は、課税の免除を受けられる金額は原則500万円。例外として、耐震やエコロジーを意図した設計をされている住宅は、良質な住宅として1000万円までの免除を受けられた。

この贈与税を規定する法令は、期限が昨年末までとなっていたが、今年はその額を引き上げて続けられることになった。一般住宅なら1000万円、良質な住宅と承認されたら1500万円まで非課税扱いになるのだ。


住宅購入時に家族から金銭援助を受けると認められる課税免除制度

住宅取得のために用いる資金を近親から贈与される場合、昨年までも一定の枠内で課税の免除が認められてきた。この法令は今年も改正されており、限度額が一気に上がっている。

1. 平成26年1月1日~平成26年12月31日に特例を利用するなら
・一般住宅の場合の非課税額: 500万円まで
・良質な住宅(*注1)の場合の非課税額:~1000万円まで
2. 平成27年1月1日~平成27年12月31日に特例を利用するなら
・一般住宅の場合の非課税額: 1000万円まで
・良質な住宅(*注1)の場合の非課税額:~1500万円まで
3. 平成28年1月1日~平成29年9月30日(*注2)に特例を利用するなら
・一般住宅の場合の非課税額: 700万円まで
・良質な住宅(*注1)の場合の非課税額:~1200万円まで

(*注1)耐震性や、エネルギーの節約・バリアフリー性といった観点で高い機能が認められる住宅が該当。
「省エネルギー対策等級」の4相当または「耐震等級」2以上・高齢者等配慮対策等級3以上……といった基準が指定されている。
(*注2)ただし下記の表を参照。増税時期変更のため、表中の金額の適用期間は3月末までとなる。

この特例は、平成24年から26年にかけてどんどん限度額が下げられてきた。しかし今年27年に入ってまた額が引き上げられた形になっている。今後も、1~2年単位で非課税枠は変わっていく予定だが、増税の行方によってその枠が変わる可能性が以前より示されてきた。


消費税UPの時期が確定し、近い将来の「住宅取得資金の非課税額」の行方も鮮明に

3月末の参院本会議で、本年度の「税制改正関連法」が可決された。この中で、消費税を8%→10%へと引き上げる時期について、平成29年4月にすることが確定されている。

実は「住宅取得資金の特例」については、近い将来の増税の時期に合わせて、「8%の場合」と「10%の場合」の2通りの非課税額が公表されていた。10%の場合は限度額が高いのだが、増税の時期が決まったため、「より高い限度額で、いつからこの特例を使えるのか」その点が自然とはっきりしたことになる(以下の表を参照)。

1. 平成29年4月~平成29年9月に特例を利用するなら
・一般住宅の場合の非課税額: 2500万円まで
・良質な住宅の場合の非課税額: 3000万円まで
2. 平成29年10月~平成30年9月に特例を利用するなら
・一般住宅の場合の非課税額: 1000万円まで
・良質な住宅の場合の非課税額: 1500万円まで

以上の確定事項を合わせると、今年は昨年や来年と比べてこの特例の利用に向いており、近いうちに住宅を買いたいなら年内に利用したほうが得策だ。しかし、増税の時期まで待てるなら、購入日を2年後に予定するという手もあり得る。


年内に住宅を購入するなら、かなりの節税効果に与れる可能性

現在は、1000万円前後の安価な戸建て住宅が続出している時代だが、たとえば今年が終わるまでに安めの物件を購入するなら、親から1000万円まで援助を受ければ自己負担額をかなりの少額に抑えることも可能だろう。また、以下のような例も成立し得る。

例2)遺産は銀行預金のみ(5000万円)/相続人は息子1名のみ

1.息子は親から、平成27年中に住宅購入のために1000万円の援助を受ける
2.親はすでに500万円の終身保険に加入済みである

・遺産額5000万円-「非課税額(1000万円+500万円)」=3500万円
・控除額→「定額3000万円」+「600万円×法定相続人1名」=3600万円
・課税対象→3500万円-3600万円=ゼロ未満
となり、親が急に亡くなっても相続税を申告する必要はなくなる。


住宅取得と相続、そして節税をまとめて実現するために

住宅は、ほとんどの消費者にとって一生に1~2度くらいしか経験しない買い物。住宅ローンを組む例が一般的だが、やはり家族にできれば協力してほしいもの。今年、あるいは数年後に購入するなら、無駄のない相続をするために役に立つチャンスが増えるため、使えそうであればぜひ使いたいところだ。

もちろん、この手段も万能ではない。ケースバイケースではあるが、予想外のデメリットに見舞われる可能性もある。相続専門の税理士などに相談して、間違いのない住宅取得・相続・節税を一度に成立させるのがベストだろう。

奥田 周年 (おくだ ちかとし) 税理士。
OAG税理士法人 資産税部 部長
執筆書籍は、遺産相続と相続税がよくわかる本(日本文芸社:監修)、
ずるいぞ!その相続(かんき出版:編著)、Q&A相続実務全書(ぎょうせい刊: 共著)等多数。相続税・贈与税の専門税理士でチーム相続を組織し、 メディア を主宰。

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