三菱UFJ信託銀行,資産管理業務,UBS
(写真=Getty Images)

6月19日、三菱UFJ信託銀行 <8402> が、スイスの金融大手UBSの資産管理事業を買収することで基本合意した。UBSのホームページですでに開示されているが、MUFG Investor ServicesがUBS Global Asset Management』のオルタナティブ・ファンド・サービス(AFS)部門を買収するという交渉が合意に達したようである。

三菱UFJ信託銀行は、2013年に海外ファンド管理会社Butterfield Fulcrum Groupを買収し、ヘッジファンドなどのオルタナティブ運用ファンドを含む海外顧客向けのファンド管理業務に参入したが、今回のM&Aが成功すれば、さらに業容を拡大することになる。


ファンドの資産管理業務内容は?

ファンドの資産管理業務は、カストディアンと呼ばれる有価証券の保管業務とアドミニストレーターと呼ばれるファンドの管理業務から構成される。カストディアンは、資産運用会社が運用する株式や債券などの有価証券を保管する業務である。

一方、アドミニストレーターは、預かっている資産の価格を評価しファンドの純資産額や基準価額を算出したり、運用報告書を作成したりするほか、有価証券のトレードオペレーション、規制当局への報告書の作成、税務申告を代行する場合もある。

カストディアンに比べ、アドミニストレーターのほうがサービスに付加価値をつけやすく、収益率も高い。両方とも世界的な金融緩和と、先進国・新興国を問わず進行する高齢化を背景とする資産運用ビジネスの拡大の波に乗りニーズは高まる一方であるが、いずれも装置産業であるため、大きさがものをいうビジネスである。

したがって、今回の買収は三菱UFJ信託銀行にとって良い話ではあるが、生き残るためには、ひたすら規模の拡大を追わざるを得ないともいえる。


今回の買収ターゲット

今回の買収のターゲットであるオルタナティブ・ファンド・サービス(AFS)部門は、名前のとおり、オルタナティブ・ファンドの顧客を対象とし、主にヘッジファンド向けのカストディアンやアドミニストレーターのサービスを行なう部門である。ヘッジファンド向けのサービスの仕組みを図示すると、以下のようになる。

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ヘッジファンド向けのサービスは、サービス・プロバイダーと呼ばれ、そのうちのカストディアンとアドミニストレーターが今回の買収ターゲットである。

一方、サービス・プロバイダーで買収対象になっていないのがプライムブローカーと呼ばれるサービスで、これは、通常の伝統的なファンド向けのサービスには存在しないヘッジファンド運用に特有のものである。ヘッジファンドに対し、取引の執行および決済、ファンドへの有価証券の貸付、現金の貸付によるレバレッジ機能の提供に加え、『Capital Introduction』と呼ばれるヘッジファンドへの投資顧客の紹介まで行う。

プライムブローカーは、投資銀行が行なう業務であり、世界的にUBS、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、ドイツ銀行などによりほぼ寡占化されている。リーマンショック以前は、多数の投資銀行が参入していたが、プライムブローカーの業務を提供する際は、カストディアン業務まで兼務するケースが多い。そのため、投資銀行が自己の名義で行う取引に際し、カストディアンとして預かっている顧客資産を担保に流用してしまうケースが多発したため、信用力の低い投資銀行は淘汰され、現在の寡占状況となった。

プライムブローカーは、サービス・プロバイダーの中で、もっとも高収益な花形ビジネスである。一方、今回の買収ターゲットのカストディアンとアドミニストレーターは、低収益で地味なビジネスであり、UBSが売却する収益率の低い部門を、三菱UFJ信託銀行が購入する形となっている。