今回の買収の評価は?
三菱UFJ信託銀行としては、三菱UFJフィナンシャルグループの一員として、信託銀行の業務拡大を目指してカストディアンとアドミニストレーターを保有している。最も美味しい部分であるプライムブローカーは、グループが出資しているモルガン・スタンレーがメインプレーヤーとして存在するため、参入する必要がないのであろう。
もっとも、プライムブローカーは、高度な英語力とスピード感のある意思決定など、日本企業に決定的に欠落している要素が必須のビジネスであり、参入したくてもハードルが高過ぎると言えなくもない。
今回の買収は、現実的なビジネス拡大の手段として評価できるものである。カストディアンやアドミニストレーターの業務は地味なビジネスではあるが、事務の正確性を要求されるため、日本人の性格には合致している。事務の正確さにこだわる日本人のDNAは、これらの業務においては圧倒的なアドバンテージなのである。また、業務を巨大化させることで、他の業務と比べて安定した収益を着実に確保できることも強みである。
しかし一方で、カストディアンの業務では、少々大雑把な神経も必要となる。カストディアンやアドミニストレーターの業務を日本の金融機関が伸ばしていくには、日本人としての几帳面で正確性にこだわる精神を持ちながらも、経済合理性のためには大雑把な感性も受容できることが重要になる。
自分には厳しく、他人には優しくといったところだろうか。現場で中心となって働くのは、それぞれの国の現地の人々だが、経営陣の感覚や感性といったものは、当然現場にも浸透するはずだ。日本人の経営陣がその難しいバランスをよく理解することが成功への鍵となるだろう。
三菱UFJ信託銀行がここまでファンド管理残高を伸ばしてきたのは、日本企業でありつつも、グローバルな商慣習に上手く適応してきたからにほかならない。これまでの買収戦略も、予想より早いペースで王道を進んでいるという感じがする。引き続き、これまでの路線を維持しながら、徹底的に巨大化を目指し、買収を重ねていってもらいたい。(ZUU online 編集部)
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