ギリシャの債務問題では、IMFの債務に対してギリシャ政府の返済が間に合わず、IMFが支援を全面的に停止する事態にまで発展した。ギリシャ国内で緊縮財政政策の是非を問う国民投票が予定されているほか、ギリシャは迫ってくるECBへの返済期限にも対応しなければならず、しばらくは目が離せない様相だ。

世界中で人々を慌てさせているであろうこのギリシャの債務問題については、しかし、そもそもの根底にあるのは、ギリシャ政府が詐術とも捉えられかねない方法で作成した財政内容を提出し、EUへの加入が認められたことだと囁く向きもある。他方で、この本質的な問題に触れるメディアは少ない。

ユーロ加盟を目指していた当時のギリシャ政府が置かれた難しい状況の抜け穴を活用したとも言えるが、ユーロ圏の財務危機はもっと、もっとシンプルであったはずだろう。欧州各国の政府やEU関係者らにとって皮肉なのは、加盟国の財政危機への対応に悩んでいるであろうECB・ドラギ総裁自身がこの、ギリシャのEU加盟を支えたことだ。さらには、その際に、ギリシャ政府を支えたゴールドマン・サックス(GS)銀行とも深いかかわりを同総裁は持っているのだ。


GSの古典的な手法で加盟を果たしたギリシャ

ユーロに加盟するためには本来、政府の債務残高をGDP比で60%以内に抑え、財政赤字は3%に抑えること、もしくは抑えられると確証をえることが条件となっていた。当時のギリシャ政府はこの要件をどうにも満たすことができずにいたこともあり、GSが同国政府を助けた。GSが提示した手法は古典的な手法で、通貨スワップだった。この時、最初に設定する為替レートを当時のスポットから作為的に遠く離れたレベルにし、たとえば100億円の担保に対して2億円を貸付し、満期までの金利で最初のずれをギリシャに払わせるといった方法でもあった。これ自体はかなり一般的なデリバティブの手法の範疇に入るものではあり、GSが手の込んだ手法を提案した格好で、実行も成功裏に終えた。


EUのルールをかいくぐる巧妙なやり口

当時のEUの財務データのルールは、最初に余分に入ってきた金額をそのまま現金として扱い、デリバティブによる将来のキャッシュアウトは債務残高に含めなくても良いとしていた。この点を利つうかwギリシャ政府は財政状況を改善し、ユーロ通貨圏への加盟を果たしたとみられている。GSもこうしたギリシャ関連の取り引きで、想定元本1兆円ほどの取引をしたと言われており、同社が数百億円の利益を得たとの見方もある。さらには、2009年のギリシャ危機では、ギリシャ国債のCDSの自己勘定取引でもGSが利益を上げたと言われており、ギリシャの債権リスクでは事情を知るだけに他社に対して優位な状況にあるともされているのだ。