トランス脂肪酸
(写真=Thinkstock/Getty Images)

2015年6月12日、米国食品医薬品局(FDA)が、食品事業者に向けて、マーガリンなどトランス脂肪酸が多く含まれる加工植物油脂の使用を事実上禁止する旨の通達を出した。
実際に規制が開始されるのは2018年6月18日からだが、今後3年間の猶予期間を経て米国の食品からトランス脂肪酸が消えることになる。


トランス脂肪酸とは?

トランス脂肪酸はキャノーラ油やコーン油など常温で液体の植物油を水素化という技術を使うことによって合成される。マーガリンやファストスプレッドなどは、パンに塗りやすく固体化させているが、その過程で水素化が行われる。

また、パンやクッキーなど菓子類を作るときに使われるショートニングも水素化された植物油脂であり、やはり大量にトランス脂肪酸を含んでいる。ショートニングを添加して菓子などを焼くと「サクサク」した心地よい歯ごたえが生まれ、多くの食品メーカーで大量に使われている。


多くの食品に含まれるトランス脂肪酸

日本では、トランス脂肪酸や水素化植物油脂を含む食品について、具体的な表示は義務付けられていない。これらの油脂は、原材料として様々な名称で表示されている。

一度注意してクッキーなど菓子類の表示ラベルを見て欲しい。マーガリンやショートニングと直接記載している食品もあるが、食用加工油脂、植物性油脂、水素化油脂などと一見しただけでは判りにくく表示されている場合も多い。見渡してみると比較的安価に購入できる菓子類にはほとんどトランス脂肪酸が含まれていることがわかるはずだ。

菓子類の他にもパン、ケーキ、即席めん、ファストフードや冷凍食品などにもトランス脂肪酸は含まれている。またマーガリンやショートニングほどではないが、通常購入する植物油にも含まれており、通常の揚げ物の多くにはトランス脂肪酸が含まれていると考えてよいであろう。

安価な外食やお持ち帰り惣菜、スーパーなどの溢れんばかりの加工食品、これらによって私たちの食生活は豊かになったが、そのほとんどにトランス脂肪酸が含まれている。それだけに米国の規制が食品業界に与えるインパクトの大きさも理解できるはずだ。


重大な健康被害をおよぼす可能性

トランス脂肪酸は植物油由来なので、バターなどよりも低カロリーで健康的だと思いがちである。かつて日本の食品メーカーはマーガリンを「健康イメージ」で販売していた時期があった。

だが、1990年代後半に「マーガリンの過剰な摂取は心臓病のリスクを高める」というショッキングな論文が、米国最高峰の内科雑誌に発表され、その後も続々とトランス脂肪酸の健康被害に関して世界中から報告されている。

現在までに明らかになっているトランス脂肪酸の健康への影響は以下の2点である。
1)血中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を高めること
2)心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患に罹患するリスクを高めること

これ以外にも様々な健康被害が報告されているが、仮説段階のもの多く、今後の精密な実験やデータ収集が待たれるところである。少なくとも、トランス脂肪酸を食べ続けると重大な健康被害をおよぼす可能性があるということが判ってきた。