(写真=PIXTA)
2015年から所得税の最高税率が40%から45%に引き上げられた。一方で、法人税率は4月1日以降の事業年度について25.5%から23.9%に引き下げられた。流れとしては、個人富裕層への課税を強化し、法人に対しては課税を緩和している。今回はこの強化された所得税のうち、不動産と関係する部分を見ていくことにする。
不動産の税金の種類
まずはじめに、不動産に関する税金を整理しよう。所得税以外の税金は、不動産の取得時と保有時に発生する。不動産の取得時に発生する主な税金としては、不動産取得税と登録免許税がある。不動産取得税は取得後、半年から1年半くらいの間に都道府県から納税通知書が届き課税される。登録免許税については、所有権の保存登記や移転登記をする際に発生する税金である。登記変更は通常、売買時に行うため、売買時点で課税される。
一方、不動産の保有時に掛かる税金としては、固定資産税と都市計画税がある。こちらも土地建物評価額からオフィスや住宅などの建物用途に応じて課税標準額が決定され、これに一定の税率を掛けた金額が課税される。基本的に不動産の売却時点で発生する税金はない。例外的に、売却時に抵当権抹消を行うときは登記変更が生じ、登録免許税が発生する。
不動産と所得税
よって、個人が行う不動産事業で、保有中の利益が出た場合は所得税として課税され、売却時に利益が出た場合も所得税として課税される。法人が不動産事業を行えば、保有中の利益が出た場合は法人税として課税され、売却時に利益が出た場合も法人税として課税される。「不動産所得税」もしくは「譲渡所得税」という言葉はないが、ここでは個人が不動産を保有しているときに発生する所得税を「不動産所得税」、不動産を売却したときに発生する所得税を「譲渡所得税」と呼ぶことにしよう。
不動産所得税の特徴と節税
不動産所得税を節税するうえで経費として認められている主な費用には、固定資産税や都市計画税の税金、火災保険・損害保険などの保険料、エレベーターの点検や警備費などの維持修繕費用、管理会社に支払う管理費用、減価償却費などがある。減価償却費以外の費用は、賃料収入の30%以内に抑えることが目安である。減価償却費は築年数が浅いほど大きくなる。特徴としては、不動産事業は経費として必要なものがハッキリしているため、個人の生活費と区別しにくい経費、例えば一人で外食した費用などは認められない。一方で、税理士や弁護士などへの報酬は費用として認められる。不動産所得税はどの経費が費用として認められるのかを明確にしておくことが節税のポイントだ。
譲渡所得税の特徴と節税
譲渡所得税を節税するうえで経費として認められている費用は、売却時の仲介手数料や印紙税である。また購入時の仲介手数料や登記費用、不動産取得税も経費として認められる。譲渡所得は「譲渡収入金額―(取得費+譲渡費用)」で決定される。ここで取得費であるが、法人の場合は簿価として残るため計算しやすいが、個人の場合は購入当時の売買契約書を紛失して購入額が分からないケースもある。その場合は、一般財団法人日本不動産研究所が公表している「市街地価格指数」を用いて購入価格を推定することをお勧めする。取得価格は「売却価格×(取得時の指数÷譲渡時の指数)」となる。この手法で算出しないと、売却価格の5%が概算取得費となる。5%の概算取得費で購入額を算出すると売却額の90%程度が利益となり、所得税が大幅に増える。譲渡所得税は購入額が不明なときに、その求め方をどうするかが節税のポイントだ。
バランスを考えた節税を
以上、個人が不動産投資を行う際に発生する税金を見てきた。不動産投資は、追加投資で銀行から新たに借入をする可能性もある。節税し過ぎて赤字にしてしまうと、銀行の信用力を失い借入ができなくなってしまう恐れがある。そのため適切な節税を行い黒字経営を続けることも重要だ。不動産所得と譲渡所得は費用計上と利益創出のバランスを保ちながら節税策を考えることをお勧めしたい。(提供: Leeways online )
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