◉西武ホールディングス(HD)の財務の健全性
財務の健全性を見るに際し、ここでは当座比率とキャッシュフローを見てみましょう。
【当座比率】
まず、図2の西武ホールディングスの連結貸借対照表を利用し、当座比率を計算してみましょう。
図2:西武ホールディングスの連結貸借対照表
出典:西武ホールディングス(2013)「2013年3月期有価証券報告書」
当座比率は、
当座比率 = 当座資産 ÷ 流動負債 × 100
で計算可能です。短期の債務償還能力を厳密に評価出来る点で、分子を流動資産とする流動比率よりも優れていると考えられます。(流動資産には、原材料や商品など直ぐに現金化出来るとは限らない資産が含まれるためです。)
ここでの当座資産は貸借対照表資産の部より、「現金及び預金」(19508万円)、「受取手形及び売掛金」(45550万円)です。流動負債は貸借対照表負債の部より425009万円です。故に、
当座比率 = (19508 + 45550) ÷ 425009 × 100 ≒ 15.31%
となります。鉄道会社などは日々の現金収入が多いので、それほど余剰の当座資産を用意していなくても短期の債務償還に困らないという特性があるので、15.31%だからと言ってとりわけ財務が不健全とはいえません。実際、民営鉄道業の当座比率の平均は31.15%(EDIUNETより)と全業種の中でもかなり低い部類です。とは言え、鉄道以外の事業も多く行っている事を考えれば、少し低いと言えるかもしれません。
【キャッシュフロー】
図3は、西武ホールディングスの連結キャッシュフロー計算書です。
図3:西武ホールディングスの連結キャッシュフロー計算書
出典:西武ホールディングス(2013)「2013年3月期有価証券報告書」
ここから営業キャッシュフロー・投資キャッシュフロー・財務キャッシュフローを抽出し、フリー・キャッシュフローを計算すると、下図4のようになります。
図4:西武ホールディングスのキャッシュフロー
出典:西武ホールディングス(2013)「2013年3月期有価証券報告書」より筆者作成
注:単位は百万円である。
営業キャッシュフローは大きくプラスとなっており本業は良好であると考えて良いでしょう。
また、投資キャッシュフローは、有形及び無形固定資産の取得を中心に大きくマイナスになっていますが、これは積極的に投資を行っている企業に特有の現象であり、本業の好調と相まって積極的に事業を拡大していると考えて良いでしょう。
財務キャッシュフローはマイナスの状態が続いており、これは内訳を見ると債務を償還している事が分かります。これ自体は悪い事ではありませんが、フリー・キャッシュフローが減っており、キャッシュを多く吐き出した事により、自由に使える資金が減っている事には注意が必要です。
◉西武ホールディングス(HD)の収益性
次に、図5の連結損益計算書などから収益性を見てみましょう。
図5:西武ホールディングスの連結損益計算書
出典:西武ホールディングス(2013)「2013年3月期有価証券報告書」
下図6は、西武ホールディングスの売上高営業利益率・売上高当期純利益率・総資産利益率(ROA)を業種平均と比較したものです。
図6:西武ホールディングスの収益性
出典:西武ホールディングスの収益性は西武ホールディングス(2013)「2013年3月期有価証券報告書」より計算した。業種平均はEDIUNETのものを利用した。
主要な利益指標を見る限りは、あまり効率的に投資が行えているとは言い難いようです。セグメント別に細かく見れば高い収益性を持つ事業もあるかもしれませんが、連結ベースでは平均的な水準若しくはそれを下回る水準です。