135 (1) 撮影:浅野里美

2020年の東京オリンピックに向けた新国立競技場建設をめぐって連日ニュースでも2500億円にものぼる高額建設費の是非が問われていたが、建設計画はゼロベースに戻し、全面的に見直されることになった。

焦点になったのは高額の建設費だ。だが、そもそもオリンピックの目的はなんだろうか?オリンピックは競技に参加したり見たりする人だけのためではなく、世界中の人々が主体的にスポーツに関わり、幸福になるために開催されるのではないだろうか。


アマチュア選手の数を増やすことが重要

筆者はサッカー界に身を置く人間で、日本サッカーの発展を心から願っている一人だ。だが、日本サッカー界が世界の頂点を目指すなら、A代表に象徴されるトップのレベルアップも大事だけれども、それより小学生、中学生、高校生、大学生、社会人、シニア、女子といったすべてのアマチュア選手の数を増やすボトムアップの方がもっと重要だと思っている。FIFAランキングの上位10に入るような国の総人口に対するサッカー人口の割合は、明らかに日本より大きな数字となっている。

日本サッカー協会に登録している選手の総数は約96万人。それに比べてドイツは人口約8,000万人だが、670万人の選手がいる。ドイツでのサッカー人気が特段高いことを割り引いても、日本のサッカー人口は少ない。その国でナンバーワンのスポーツになることは当たり前で、なおかつすべてのカテゴリーでサッカー人口を増やし、サッカーメディアを含めた、サッカーに関わる人たちのレベルも上げることも大事だ。国全体のパッションの総量で並ばないと、サッカー強国と肩を並べることはできないと思っている。

そういった状態を目指すには何がボトルネックになっているのか?そう、それは器たるスポーツ施設の数が圧倒的に足りていない。いくらいい指導者やメソッドがあったとしても、"ハード"がなければ始まらない。今でさえ、多くの育成年代のクラブは練習場確保に苦しんでいるのに、数年後に今の何倍も選手が増えたら、現実には対応できない。


健康になれば医療費が浮く、そのお金でスポーツ施設へ投資する

農耕民族の我々日本人はかつて田んぼや畑で体を使って汗を流してきたわけで、人間は本来生物的に体を使って生きていくようにできている。それが現代社会では、一日中パソコンの前や家の中で過ごすから成人病だったり、ストレスだったり、いろんな問題が起きるわけだ。

すべての人が毎日スポーツをやるのは無理にしても、せめて週末に自分の好きなスポーツをやるようになれば、劇的に成人病患者は減り、医療費や医薬費が激減する可能性がある。そこで浮いた数千億円を身近なスポーツ施設建設に投資するような好循環を作ってほしい。