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(写真=PIXTA)

あと一ヶ月もすれば百貨店では夏物商戦の総括が行われる。

昨年以上の平均気温が予想される今夏の結果はどうでるだろうか?業界ごとの強弱はあるとしても、少なくとも百貨店の商機のずれた夏物商戦の結果はあまり期待できないのではないだろうか。中元商戦も、クリアランスもあのジメジメしていた6月から7月初旬にかけて盛り上がることなく終わってしまっていたからだ。

機を見るに敏と言う言葉があるが、物事には絶妙のタイミングがあって、そのタイミングを敏感に感じ取れる能力を言い表した言葉である。特に商売人と言われる人は、古来よりこの感覚に秀でていてタイミングを外さずモノを売り、利益を得、財をなしてきた。そのタイミングこそ商機だ。

今の百貨店や小売業で働く人たちはこの商機をどう思っているのだろうか?クリアランスというプロモーションは果たして商機を意識しているか、前年踏襲や業界のスキームの中で無為無策な空打ちをしているのではないだろうか?

夏本番となり、一気に夏物衣料に衣替えするのはやはり梅雨明けの7月中旬以降。衣料だけに限らず住環境の熱帯夜対策、夏休みに入る子供、夏のレジャー計画、夏のボーナス支給、中元という夏の挨拶など一気に沸点に達する時期がある。このタイミングこそ商機ではないだろうか。

大義をなくしたバーゲン

そもそも、クリアランスは消費者にとって何の意味があるのだろうかという根本的な話も含めて、小売業はクリアランスの時期をいつにするかということについて、紆余曲折の歴史を繰り返して来た。夏物、冬物いずれもフルシーズンに入る直前で一斉値下げしてしまうこの売り方が問われてきたわけだ。

ある時期から商品を値下げするにはそれなりの理由がある。季節外れ品、大量仕入れの売れ残り、キズモノ・ハンパモノ、などなど。これらの値下げ理由は「これ、どうして安くなってるの?」という消費者の質問に、わかりやすい答えをくれる。少し理由は異なるが、決算処分もなんとなくわかるし、優勝セールもそれなりに解釈できる。

では、クリアランスは夏物処分あるいは冬物処分かというと、これはまったくあてはまらない。夏物が残ったから処分するのではなく、夏本番に入るから安く売るということらしい。

ここまで読むと、クリアランスがいかに理由不明な値下げかということに改めて気づく。あえて理由を言うと、「クリアランスだから安くなっている」のだ。言い換えれば、「バーゲンだからお買い得!」「夏物をクリアランス価格でご奉仕!」という単なる宣伝文句的な理由しか浮かばないが、よくよく考えても禅問答に近くなってくる。結局値下げの理由はごまかされて闇から闇へ、といったところだ。

売り手側の勝手な商機づくり

クリアランスを、売り手側の勝手な商機作りと言うと全て解決できる。そもそも商売に理屈は不要なので、売れりゃイイ、安いからイイじゃないの、という乱暴な発想からすると、勝手にどうぞとなるのだが、百貨店商売の凋落が言われる中では少なくともこの業界人には避けて通れなくなっているテーマである。そしてこのテーマとは、クリアランスの時期でもなくバーゲンの理由でもなく、「商機とは何か?」ということである。

ところで商機は売り手側の言葉だが、これに対峙する買い手側の言葉は「買いたい気分」、つまりムードである。欲しい気分、買いたい気分は、季節モノで言うと文字通り季節感である。蒸し暑くて毎日梅雨空の下で、盛夏モノにはなかなか手を出さない。いくら準備の早い人であったとしても、そろそろ盛夏が近いから先に買って用意しておこうなどとは思わない。品薄なわけでもなく、むしろ飽和状態の中で先買いなどは考えにくいのだ。(ZUU online 編集部)