(写真=PIXTA)
はじめに
2014年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられてから1年以上が経過し、2014年度の実績値がほぼ出揃った。本稿では消費税率引き上げによる日本経済への影響を、前回の消費税率引き上げ時(1997年度)との比較、事前予想からの乖離という視点を中心に、様々な角度から検証する。
実質GDPの動向
◆事前予想から大きく下振れた2014年度の実質GDP成長率
2014年度の実質GDP成長率は▲0.9%と5年ぶりのマイナス成長となり、前回消費税率が引き上げられた1997年度の0.1%を大きく下回った(図表1)。
四半期毎の成長率の推移を比較すると、税率引き上げ直前の1-3月期の成長率は今回のほうが高く、その分増税直後の4-6月期の落ち込みも今回のほうが大きかった。7-9月期は前回が反動の影響剥落などからプラス成長に復帰したのに対し、今回は2四半期連続でマイナス成長となった。
年度下期については、今回は10-12月期に前期比年率1.2%と3四半期ぶりのプラス成長となった後、2015年1-3月期は同3.9%へと伸びを高めたが、前回は年度後半に2四半期連続のマイナス成長となり、1998年1-3月期は前期比年率▲7.4%の大幅マイナス成長となった(図表2)。
なお、1997年度下期の景気の落ち込みは消費税率引き上げの影響というよりはむしろ、アジア通貨危機、国内の金融システム不安の深刻化による影響が大きかったものと思われる。
需要項目別には、個人消費が1997年度の前年比▲1.0%に対して、2014年度は同▲3.1%の大幅減少となったことが最も大きな違いである。個人消費による実質GDP成長率への寄与度は1997年度の1997年度の▲0.6%に対して2014年度は▲1.9%となった(図表3)。
それ以外の需要項目では、前回は消費増税と同時に公共投資を削減したために公的需要の寄与度が前年比▲0.5%となっていたのに対し、今回は増税前に経済対策を策定したこともあり、前年比0.2%と小幅ながら成長率の押し上げ要因となった。
次に2014年度の実績値を事前予想との比較でみると、実質GDP成長率は消費税率引き上げ直前の2014年1月時点では政府(1.4%)、日銀(1.4%)、民間(0.8%)ともにプラス成長を予想していた。実績値は政府、日銀の見通しから2%以上、民間の見通しから2%近く下振れしたことになる(図表4)。
内訳をみると、ほとんどの需要項目が見通しから下振れしたが、特に民間需要(個人消費、住宅投資、設備投資)の下振れ幅が大きい(1)。一方、民間在庫、公的固定資本形成、輸出入は見通しから上振れした。
ただし、輸出入については2014年1月分からGDPを推計する際の基礎統計である国際収支統計の見直しが実施され、2013年と2014年の間に断層が生じたことによる影響が大きい(2)。統計上の技術的な要因を除くと、実態としては輸出入の実績値は見通しから下振れしたと考えらえる。