「成長企業の株式に中長期構えで投資をすることが、株式投資で資産を作る有力な方法」とされています。
ですが、有言実行が決して容易ではないのが現実のようです。「資産作りにつながる成長株は、どうやったら発掘することができるのか」から、まず難業は始まります。そして一番の難敵は、成長株に出会えても、値上がり場面を迎えると“とりあえず利益を確定したほうがよいのではないか”という悪魔の囁き?です。
ですが長きに亘る株式市場には経験から、時々の株価動向に一喜一憂することなく、中長期構えの成長株投資で資産形成を考えるために有効な“物差し”が編み出されています。
PEGレシオは、中でも実績の積み上げが何にも勝る証明となっている、有力な物差しです。
PEGレシオとは
PEGレシオは、「株価が企業の成長性を反映しているか」をはかる尺度です。次のような算定式を使います。
『時価の予想PER÷(今期予想を含む)3-5期間のEPSの平均成長率』
そして算出された値は、過去の経験からこう読み解かれます。
「2以下なら、いまだ買い余地あり」「1以下なら、買い余地十分」
加えるなら「1以下」の場合は、「株価は企業の成長性に割り負けている。反映しきれていない」といわれたりもします。通常PEGレシオは、中・小型成長株の銘柄を選ぶ際の判断に用いられています。
PEGレシオの算出法については、「分母を営業利益の平均成長率に置き換える」とする考え方もあります。否定はしません。営業利益は周知のとおり、決算期ごとの本業が稼ぎ出す利益だからです。が過去の実績は上記の算定式が、物差しとして優良であることを示しています。「EPSは特別利益・特別損失、税効果などの影響を受けやすい」とする指摘もあります。がそうした部分を勘案してEPSの平均成長率を算出することこそが、株式投資を行う上での自己責任の一環といえるのではないでしょうか。
PEGレシオを活用し、成長株投資の本道を行くプロの投資家もいます。
塩住秀夫氏の教え
塩住秀夫氏などは、その代表的なおひとりです。私はPEGレシオの存在を、塩住氏から学びました。
失礼ながら塩住氏は、70歳に手が届こうといういまなお、投資顧問会社(一任勘定)のCEOにして現役のファンドマネージャーです。過去には幾多の輝かしい実績を残しています。
株式投資を生業とする入り口となったのは、英国の名門投資銀行だったロバート・フレミング社(2000年、JPモルガン・チェースにより吸収)でした。1979年には日本人として初めて、英国の金融街・シティで(ロバート・フレミングの)取締役に抜擢された人物です。
ソロスに認められた男
またシティでの実績が評価されたのでしょう。塩住氏が、クォンタム・ファンドの創設者として知られるジョージ・ソロス氏から直接電話を受けたのは、1982年の夏のことでした。「私のコアファンドで、日本株の運用担当を引き受けて欲しいのだがどうだろう」という打診でした。突然の話でしたが、塩住氏は1983年から3年間、その任に当たっています。
塩住氏はソロス氏の打診に対し、
「自分は、株式投資の王道は成長株投資だと確信している。日本株投資に関し、私流の投資法に一任してもらえるなら引き受けさせて頂きます」
という条件を出し、OKを確認した上で着任したそうです。「クォンタム・ファンドでの3年間のパフォーマンスはどんな具合だったのですか」と聞いたことがありますが、「それは企業秘密ですよ」として口をつむがれてしまいました。が、こうリップサービスをしてくれたものです。「3年の任期が明けた時、ボス(ソロス氏)から、報酬とは別にジャガーを1台プレゼントしてもらいました」。
塩住氏は“株式投資の王道”をいまでも貫いています。