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(写真=PIXTA)


急展開したギリシャ情勢

6月のユーロ圏に月末を期限とするギリシャ支援協議の決裂、先進国として初めての国際通貨基金(IMF)への返済の延滞という激震が走った。

支援協議が決裂する前から、ギリシャの銀行からは、預金の流出が加速し始めていた。今年1月の総選挙で反緊縮を掲げて勝利したチプラス政権が発足してから、IMF、欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)からなる支援機関からの金融支援の条件となる改革プログラムについての交渉が平行線を辿り続けていたからだ。

ECBは2月に、ギリシャ国債を流動性供給の際の適格担保から外し、ギリシャの銀行の資金調達は、ギリシャ中央銀行からの緊急流動性支援(ELA)に依存するようになった。ECBは、チプラス政権が、支援機関側の改革案にノーを突きつける国民投票の実施を決め、協議が決裂したことを受けて、ギリシャ中央銀行の求めに応じたELAの上限の引き上げを凍結した。

ギリシャは、銀行の営業の一時停止、ATMからの1日あたりの現金の引き出し額を60ユーロ(約8200円)に制限するなどの資本規制の導入を迫られた。

ギリシャ政府は、7月5日の国民投票を終えてから、改めてユーロ参加国政府の資金繰りを支援する欧州安定メカニズム(ESM)に支援を要請、12日のユーロ圏首脳会議で、ギリシャ政府が所定の期日までの改革関連法案の成立などの条件を満たせば、3年間で820~860億ユーロ(約11兆円)の第3次支援を行うことが決まった。

支援が始まれば、IMFへの延滞は解消、7月、8月に予定されるECBが保有するギリシャ国債の不履行も回避される見通しだ。第3次支援には、最大250億ユーロ(約3.4兆円)の銀行の増資や破綻処理のための資金枠も設定されており、銀行の営業再開も可能になる。

とは言え、支援協議の迷走で、銀行が数週間もの休業を迫られたことで、ギリシャ経済は大きな打撃を受けた。


緩やかな回復続くユーロ圏経済

ギリシャの財政危機は、最初に問題が発覚した2009年秋から支援協議がまとまる2010年の春までの大きな波の後、反緊縮を掲げる急進左派連合への政権交代が不安視された2012年にも緊迫し、ユーロ圏経済の回復を妨げてきた。

しかし、今回の危機は、ギリシャにとっての問題の深刻さとは裏腹に、ユーロ圏の他の国々への影響は限られているようだ。

ユーロ圏全体の景気は、個人消費主導の回復局面にある。実質GDPは今年1~3月期の前期比0.4%と回復のペースが緩やかに加速してきた[図表1]。雇用・所得環境が回復に転じ始めたことにエネルギー価格の低下[図表2]が、実質可処分所得を押し上げていることが個人消費の堅調を支える。

ギリシャ情勢が急展開した6月末から7月初旬にかけての動向をカバーする統計は未だ公表されていないが、4~6月期も勢いが大きく鈍ることはなかったようだ。総合PMI(購買担当者指数)は、実質GDPと連動性が高く、先行指標としての注目度が高いが、6月の段階で54.2と、生産の拡大と縮小の目安となる50を大きく上回る水準で前月よりも改善している。

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