全国のコアCPIは8月にマイナスも年末頃には再びプラスへ

15年8月の東京都区部のコアCPIは前年比▲0.1%となり、下落率は前月と変わらなかった。事前の市場予想(QUICK集計:▲0.1%、当社予想も▲0.1%)通りの結果であった。

灯油(7月:前年比▲17.3%→8月:同▲17.0%)の下落幅は若干縮小したが、電気代(7月:前年比▲6.7%→8月:同▲8.6%)、ガス代(7月:前年比▲7.2%→8月:同▲10.5%)、ガソリン(7月:前年比▲15.2%→8月:同▲17.8%)の下落幅が拡大したため、エネルギー価格の下落率が7月の前年比▲8.3%から同▲10.7%へと拡大した。

消費者物価指数(生鮮食品除く、東京都区部)の要因分解

一方、電気洗濯機(7月:前年比29.8%→8月:同40.2%)、冷暖房用器具(7月:前年比0.2%→8月:同4.8%)、ルームエアコン(7月:前年比▲1.4%→8月:同3.6%)などの家庭用耐久財(7月:前年比1.2%→8月:同6.5%)、テレビ(7月:前年比5.8%→8月:同10.9%)、電子辞書(7月:前年比0.0%→8月:同11.2%)などの教養娯楽耐久財(7月:前年比1.5%→8月:同7.0%)の上昇率が高まったことがコアCPI上昇率を0.1ポイント程度押し上げた。

東京都区部のコアCPI上昇率のうち、エネルギーによる寄与が▲0.73%(7月:▲0.57%)、食料(生鮮食品を除く)が0.31%(7月:0.29%)、その他が0.32%(7月:0.19%)であった。

8月の全国コアCPIはエネルギー価格の下落幅拡大を主因として13年4月以来、2年4ヵ月ぶりのマイナスとなる可能性が高い。原油価格(ドバイ)は1月の40ドル台前半から60ドル台まで上昇したが、7月に入ってからは再び下落基調となり、足もとでは40ドル台となっている。

原油価格の下落を受けてガソリン店頭価格もこのところ大きく低下しており、電気代、ガス代の前年比下落率は今後さらに拡大することが見込まれる。このため、コアCPIに対するエネルギーの寄与度は7月の前年比▲0.86%から8月以降はマイナス幅が▲1%以上に拡大する可能性が高い。

一方、かつてに比べて企業の値上げに対する抵抗感は小さくなっており、円安に伴う原材料価格の上昇に対応した価格転嫁はすでに幅広い品目で行われている。現時点では原油価格(ドバイ)が50ドル程度まで戻ることを前提としてコアCPI上昇率は15年末頃に再びプラスになると予想している。

コアCPIに対するエネルギーの寄与度

斎藤太郎
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査室長

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