成長はすべて収益へと結びつく

同社は為替変動調整後の希薄化後一株当たり利益を昨年比15%増と発表している。期中に英国で発生した訴訟処理にかかわる一時的費用は含んでいない。同条件での調整後の純利益は12%増加した。

マスターカードは新技術を持った企業を積極的に買収することで既存商品の強化を図り、革新的なソリューションを持つ企業の買収でブランド力の拡大と向上をねらう。買収した企業を自社の経営に統合していくには一定の時間を要するし、そのことが営業利益の足をひっぱる恐れもある。そうした事例が第2四半期にみられた。営業利益率が2014年第2四半期の58.4%から今年54.9%へと落ち込んだのだ。

すでに織り込み済みのこれら買収関連経費を調整すると、現行の営業経費は昨年比わずか4%増である。

同社のロケットエンジン並みの成長率を考えれば、経費増わずか4%は称賛に値する。今の勢いが続けばマスターカードは着実に利益を伸ばし、勢いを増した成長が最終利益となって実を結ぶだろう。


将来に自信を見せる経営陣

世界経済はこの数か月間、にわかに不安定な様相をみせている。マスターカードが将来を有望視してきたいくつかの市場における不振が強く影響しているためだが、同社の経営陣は過剰に気をもんではいない。むしろ事態をうまくコントロールしているようだ。

中国人民元の大幅な切り下げは、同社の来年の中国における拡大計画と、中国以外のアジア太平洋地域の既存ビジネスに打撃を与えた。同様に深刻な経済不安に襲われている南米の大国ブラジルの通貨レアルが、この数か月でドルに対してじりじりと値を下げている。

世界レベルで見ると国内総生産(GDP)は当面3%前後の伸び率にとどまると予想されている。米国のGDPについては依然3%を下回る。中国経済の成長は著しく落ち込んでいる。

世界中の株式市場がこのような低迷のシグナルに混乱を続けている。しかし事態を冷静に見ているマスターカード経営陣は、本年度の残りの期間について業績目標や業績予想を修正することもなく順調に遂行している。

先月行われた第2四半期の業績についての電話会議で、最高財務責任者(CFO)マルチナ・フント・ミージャンはアナリスト達に対し、同社の為替変動調整後の3カ年純収入は複利年間成長率(CAGR)11%から14%を維持できる見込みだと述べた。同期間の一株当たり利益についても20%超のCAGRが期待できると語った。

この自信は、同社のモバイル戦略への注力、カード流通枚数の伸び、新興市場における事業の盛り上がりからくるものだ。